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がん対策基本法(中) 登録制度精度に格差
 がん医療は「評価なくして対策なし。登録なくして評価なし」といわれている。「がん登録」はがん対策の基礎で、この部分が脆(ぜい)弱だったら、どんな立派ながん対策も画餅(がべい)になりかねない。

がん対策の一歩は「がん登録」。がん診療連携拠点病院では院内がん登録が義務付けられる。写真は熊本市立熊本市民病院=熊本市湖東1丁目
 四月施行の「がん対策基本法」に基づき、厚生労働省は七月中に作成する、がん対策推進基本計画のベースになるとみられる「がん対策の推進に関する意見交換会」(座長・垣添忠生国立がんセンター総長)がまとめた「提言」も、がん登録の重要性を強調している。

 院内と地域で

 がん登録は、医療機関単位の「院内がん登録」と地方自治体単位の「地域がん登録」がある。院内がん登録は、病院で「がん」と診断されたり、治療されたりした全患者の情報を病院全体で集め、その病院のがん治療に対する取り組みを明らかにする。何カ所かの病院が、この調査を同じ方法で実施し、情報を比較すると、病院別の特徴や課題が分かる。

 国立がんセンターがん対策情報センター(東京都中央区)は、全国二百八十六カ所の「がん診療連携拠点病院」の院内がん登録情報を集めて分析する準備を進めている。

 一方、地域がん登録は、日本では一九五〇年代に被爆地の広島市と長崎市それと宮城県で始まった。徐々に登録を実施する地方自治体が増えて、一九九二年に地域がん登録全国協議会が誕生。〇六年三月末現在、三十四道府県市が地域がん登録事業を実施している。熊本県も九三年四月から医療機関の協力を得て登録事業を開始。医療機関からの届出票は年平均七千人〜八千人に上るという。

 事業に濃淡

 地域がん登録のメリットは何か。「診断して届出、治療して届出、死亡して届出のように、患者を診るたびに医師が届け出るため、まとめると一人の患者の経過が分かる。別々の医師がやってきたことが、まとめて分かることが極めて重要」と熊本労災病院(八代市)の小川道雄院長(消化器外科)。検診が有効か、どんな治療が有効か、再発後にどんな治療をしたのか、などが分かる。

 これを全国ベースで比較すると、地域のがん対策の課題が浮き彫りになり、医療計画をどう作成するかなどが判断しやすくなる。がん医療の“均てん化”が図れる。「ところが」と続けながら、小川院長は指摘する。

 「肝心なのは精度だが、精度は大まかに言うと、登録されたがんの死亡者数が、死亡診断書に書かれたがん死亡者数の何%になるかで判断する。その地域の医師ががん登録に熱心なら数字は高くなり、がんの実態が分かる。しかし医師ががん登録をしないなら、一部の専門医療機関のみが登録するだけなので、その地域のがんの実態は分からない。下手すると、異常に高率な治療成績になったりもする」

 地域間の“精度格差”によって、新たな問題が発生しかねない可能性もあるわけだ。事実、地域がん登録全国協議会に全国四十七都道府県すべてが加入していないことを取っても、登録事業の取り組みには濃淡がある。

 厚労省が発表するがんの罹患率も、がん登録が十分でないため、正確とは言い難い。地域がん登録事業に一九六二年から取り組んでいる大阪府のデータを使って、日本人全体を推定したりもするという。“敵の全体像”が鮮明につかめないまま、対策を打っているのが実態とも言える。

  (熊本日日新聞2007年4月25日付夕刊メディカル)
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