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がん対策基本法(上) 遅れた分野底上げへ
 わが国のがん治療の遅れた分野を底上げする「がん対策基本法」が四月一日、施行された。がん対策を推進する基本的な計画づくりが政府の義務になったため、厚生労働省は七月末までに「がん対策推進基本計画」を策定する。

がん対策基本法が4月施行され、がん治療の遅れた分野が底上げされる。写真は7月中の完成を目指す済生会熊本病院「外来がん治療センター」(仮称)=熊本市近見5丁目
 基本計画は、「がん対策推進協議会」(会長・垣添忠生国立がんセンター総長)の意見や考え方を採り入れながら、厚労省がまとめる。協議会の委員は二十人。がんの専門医や患者代表、地方自治体の代表、看護師の代表、日本医師会の代表など。医療取材を続ける乳がん患者の女性記者もメンバーの一人だ。

 “下敷き”の提言

 協議会は四月中に二回開かれた。厚労省は月二回程度のペースで開き、七月の参院選前をめどに基本計画を作成するという。ここまでが第一段階。基本計画をベースに、都道府県が二〇〇八年三月末までに「がん対策推進計画」を作成するのが第二段階になる。

 推進協議会の開催回数が少なく、基本計画の詳細は分からないものの、計画の“下敷き”になるとみられる「提言」が今年三月二十八日、厚労省健康局長に提出された。患者団体や関係学会、各種団体からのヒヤリングなどを踏まえ、有識者でつくる「がん対策の推進に関する意見交換会」の議論の成果をまとめたという。

 交換会のメンバーは十人。昨年十一月以降、五回の会合を重ねた。座長は、推進協議会長の垣添忠生・国立がんセンター総長。乳がん患者の女性記者ら六人が推進協議会にも参加している。

 提言は(1)がんの予防・早期発見(2)がん医療(3)医療機関の整備(4)がん医療に関する相談支援等及び情報提供(5)がん登録(6)がん研究、の六項目を列挙。それぞれに現状を分析し、方向性や必要な方策を打ち出した。

 米国の100分の1

 例えば「がん医療」。外科手術や内視鏡手術など医師の手技が求められる部位のがんは、欧米より生存率が明らかに優れている半面、放射線療法や抗がん剤を投与する化学療法は欧米より実施件数が少なく質も担保されていないと指摘した。

 背景には、日本のがん治療は、外科医が外来診療から化学療法までほとんど“独占”してきた経緯がある。手術の合間に抗がん剤を投与している外科医も少なくないとされる。結果、放射線療法や化学療法の専門医が十分育っていないのが現状だ。

 このため提言は(1)大学に放射線腫瘍(しゅよう)学や腫瘍内科学などの講座を開設する(2)がん拠点病院にがん治療の専門部門を設置する、などを例示し、放射線療法と化学療法の推進を求めている。

 ただ化学療法に使われる抗がん剤は副作用を伴うケースが多い。一剤を投与するよりも、複数の抗がん剤を投与する場合が少なくない。しかも新しい薬剤が次々に開発され、効果と副作用を熟知して使わないと患者の命にかかわる。

 米国では、この化学療法の主役になる腫瘍内科医が約一万人いる。これに対し日本は、内科医会員が多い日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」は四月一日現在、百二十六人。米国の百分の一にすぎない。しかも地域的に偏在しており、九州では大分、熊本、宮崎、鹿児島が“空白地”。化学療法一つ取っても、がん医療の提供体制の整備は容易ではない。

  (熊本日日新聞2007年4月18日付夕刊メディカル)
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