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ドラッグ・ラグ(3)安全性確保 後れ取る日本
タミフル服用と異常行動の因果関係を検討するために開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会の調査会=4月4日撮影
 有効な医薬品の迅速承認の前提に、「安全性の確保」や「適切な使用」があるのは論をまたない。このためには行政にとどまらず、医療従事者や製薬業界、さらには国民挙げた対策が必要になる。

 『有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会』の報告書も重ねてクギを刺す。「医薬品は基本的にヒトの身体に何らかの影響を及ぼして疾患の治療や診断を行うものであるため、それが期待どおりに治療効果などとして現れる一方で、予期しない副作用が起きることも避けられない」

最低3万人の症例

 薬として承認を得るための治験データを集める一般的な方法は、薬候補と薬効成分を含まない偽薬(プラセボ)または市販中の標準的な薬との比較試験を採用する。薬候補が、有効か否かを統計学的に実証する最も科学的な手法とされている。

 厚労省によると、薬の種別によるが、製薬会社が承認申請時に治験成績として提出するデータは五百人分〜千人分が多く、集めるのに三年から七年かかる。その一方、発現率0・01%の副作用を95%の検出力で一例検出するには、統計学上、最低三万人の症例が必要という。治験で、同数の被験者を集めるには「一世紀」近く必要になる。

 これらを念頭に、厚労省・医薬品医療機器総合機構は、治験中の相談を通じた指導のほか、市販直後調査(市販後6カ月間は製薬会社が医療機関に集中的に情報提供して慎重投与を求め、重い副作用が発生すると迅速な安全対策を講じる仕組み)や、承認から原則八年後の再審査制度など欧米にはない独自制度を設けている。きっかけは、一九九六年一月、最高裁第三小法廷の判決だった。

 「医師が医薬品の添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず、医療事故が発生した場合、従わなかった合理的理由がない限り、医師の過失が推定される」とした。独自制度の創設は、添付文書の追加項目集めの手段だった。

一律6カ月

 ところが新薬開発の多彩化や速度アップで、この制度では安全性を担保できなくなっている。例えばインフルエンザ治療薬「タミフル」騒ぎ。治験段階から、タミフル服用後に異常行動が現れる患者がいるという報告はなされていた。

 しかしインフルエンザ自体にも類似作用がある。しかも服用すると、しない場合より早く治るため、そう重視されなかった。それが発売開始六年後、異常行動が相次ぎ、死者まで現れて社会問題化。厚労省の薬事・食品衛生審議会に専門家を集めた検討委員会が置かれ、タミフル服用と異常行動の因果関係を調べている。

 これなどは、市販直後調査がうまく生かされなかった例だろう。市販直後調査は、薬の種類にかかわらず一律六カ月。個別薬剤の特性などが勘案されていない。精神疾患に使われる薬剤は、肝臓での薬代謝酵素を妨げる薬ほど、薬効が強く効きが良いとされる。半面、その特性は、薬剤を長期間服用していると、その分、薬が効きすぎ、副作用が現れる可能性が高くなるのを示唆している。

 さらに抗がん剤などは、従来になかったタイプの薬が続出している。腫瘍(しゅよう)細胞や遺伝子レベルに働き掛ける薬剤、化学療法の治療歴の有無によって薬効が異なる薬剤、放射線と併用する薬剤…まさに“百花繚乱(りょうらん)”。

 こんな世界の流れに、日本は乗り遅れている。背景には、日本では長い間、外科医ががん治療の主流で、複数の抗がん剤を使いこなす腫瘍内科医を育てて来なかった歴史がある。

 (熊本日日新聞2007年10月24日付夕刊メディカル)
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