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ドラッグ・ラグ(2) 国際共同治験に期待も
 厚労省の「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」が作成した報告書は、欧米とのドラッグ・ラグ解消策の一つとして、医薬品別の最適な治験や承認審査の実施方針を打ち出した。

 しかし欧米と同時または先行して日本での治験を始める判断は、ひとえに製薬会社が下す。役所(厚労省)ができるのは原則、治験環境の整備という“お手伝い”。

 製薬会社が治験に早期着手しても、承認審査が手間取ったら帳消し。治験の段階で、厚労省や独立行政法人・医薬品医療機器総合機構がきめ細かく会社の相談に応じる。承認申請後は、審査基準をあいまいにせずに透明性を高める。結果、治験や承認審査の期間は短縮され、コストも安くつく。

 国民性の違い

 承認審査の基準明確化が、報告書に盛り込まれた背景には、新薬候補物質(リード物質)に関する評価手法を、総合機構が採用していない事情もある。審査中に疑問があったら、機構は申請した製薬会社に問い合わせ、届いた回答を分析、評価する。ただ人員が極端に少なく、独自分析は困難という。

 これに対し米国医薬品食品局(FDA)の審査部門。スタッフは〇六年三月現在、機構の百九十七人に対し二千二百人。さらに研究部門を持っている。審査中に疑問が浮かんだら、申請の根拠となった臨床データなどを製薬会社に提出させ、独自に分析し評価する。あいまいなデータではまず、承認されないという。

 日本の治験が遅れる大きな理由に、被験者を集めにくい実態がある。公的医療保険制度が普及しており、日本の医師は患者に「偽薬」かもしれない薬剤の投与を嫌う。

 一方、米国は一部の低所得層を除くと医療保険はすべて民間保険。保険会社が、患者の支払える範囲で医療の質と量を事実上決めている。これが、医療費を支払えない人たちを治験の被験者として集めやすくしているという。こんな国民性の違いから、日本では米国並みの迅速治験は困難との見方が根強い。

 透明性と効率性

 代わりに注目を集めているのが国際共同治験。これまでは日米欧の三極を念頭に進められてきたが、民族差が大きく体内薬物動態が異なる。体格の差から、薬剤の服用量や薬効も違ってくる。

 このため欧米よりも民族差が小さい、中国や韓国、台湾といった東アジアでの国際共同治験を探る動きが本格的に始まった。今年四月、日本、中国、韓国の保健担当相会議で体内薬物動態の比較研究を進めて、治験結果の相互利用につなぐ試みだ。しかし三国のうち世界に通じる医薬品メーカーは今のところ、日本に存在するのみで、中国と韓国はこれからの段階。また韓国では、日本よりも欧米メーカーとの共同治験に積極的とされる。

 日本の治験をめぐっては、透明性と効率性が担保されていないという指摘が消えない。「企業秘密の保持」をタテに、どんな種類の薬が、どこの医療機関で進められているか、国民には公開されない。新聞やテレビの広告などの被験者募集で知るくらいだ。

 効率性では、承認審査の際、製薬会社などが総合機構に提出する資料が一品目当たり六万〜十万ページに及ぶことからも容易に分かる。これを約二百人の職員が審査する。機構は〇七年度から三年間で審査や相談の人員を二百三十六人増やすが、この種の仕事ができる医師や薬剤師の人数には限りがある。このため検討会は、製薬会社OBの採用後二年間は承認審査業務から外すと定めた就業規則の見直しを、機構に求めているのだが…。


  (熊本日日新聞2007年10月17日付夕刊メディカル)
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