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| ドラッグ・ラグ(1)スピード承認「もろ刃の剣」 |
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欧米で広く使われている薬が、日本では未承認薬として使えない。結果、救える命も救えない。日米を比較すると、日本は開発から承認までの期間が米国に比べ約二・五年長いという。このドラッグ・ラグ(時間差)が、日本医療の“壁”になっている、との指摘は強い。
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| 肺がん治療薬ゲフィチニブは発売後、副作用被害が相次いだ。写真は記者会見して、被害状況や対策などを説明する厚労省の黒川安全対策課長(当時、右手前)=2002年10月 |
厚生労働省は「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」を設置。日本製薬工業協会(製薬協)などの協力を得ながら、新薬の承認審査体制の在り方などを探り、結果を報告書にまとめた。
■海外で先行承認
わが国の新薬は、厚労相が承認するため、製薬会社は厚労省に承認申請する。しかし事実上、承認審査するのは厚労省ではなく、所管の独立行政法人医薬品・医療機器総合機構(東京都千代田区)だ。総合機構は、審査資料に添付された臨床試験データなどを調べ、製薬会社と疑問点などのやり取りを重ねた後、承認の適否を参考に付けて厚労省に報告する。
厚労省は、報告の結果を考慮して、薬事・食品衛生審議会(厚労相の諮問機関)に諮り、答申に基づいて可否を判断する。この流れから承認の諾否は、総合機構で事実上決まっていることが想像できる。
大手医薬品メーカーでつくる製薬協の調べでは、〇四年の世界上位百製品のうち同一有効成分の重複品を除く八十八製品を対象に、その製品が世界で初めて発売された時点から各国で発売された時点までの平均日数をみると、米国の約五百日に対し日本は約千四百日。米国に比べると、約二・五年の時間差(ドラッグ・ラグ)が生じている。
この二・五年を分析すると、承認申請までの期間で一・五年、承認申請から承認までの審査期間で一年の時間差がある。原因は(1)欧米に比べ、審査の基準や実施体制が未整備(2)治験の基準や環境が整っていない(3)公的医療保険制度で薬価(公定価格)を決めるなどに大別される。
ドラッグ・ラグが与える“悪影響”の一つとして、日本に本社を置く製薬会社が開発した新薬も、その約40%は海外での治験が先行、比率が年々高まっている。結果、多くの新薬が海外で先行承認され、使われる。
■異例の早さ
ただ海外に先駆けた承認、販売が「最善」とは断言できない。当然、最高のリスクも背負う。典型的な例が抗がん剤ゲフィチニブ(商品名イレッサ)。手術不能または再発非小細胞肺がんの治療薬として、〇二年七月五日、厚労省が世界に先駆けて承認した。申請は、その年の一月二十五日。承認までの審査期間は五カ月余り。異例の早さだった。
「がん細胞だけを狙い撃ち、正常な細胞は傷つけない世界初の分子標的治療薬」というふれ込みで、臨床試験段階から“がんが消える夢の薬”と騒がれた。抗がん剤の主流だった点滴注射剤でなく、手軽に飲める錠剤だったのも人気を後押し。承認前から個人輸入して使う医師も少なくなかったという。〇四年八月三十日には公的医療保険の適用剤になった。
ところが、その後二カ月近くの間に推定約一万人の患者が服用し、約四十人が副作用で死亡していたことが判明、“薬害”に一転した。スピード承認は、「もろ刃の剣」になるという厳しい現実を突き付けた。
(熊本日日新聞2007年10月10日付夕刊メディカル)
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