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気管支充填術 時間短く、低いリスク
 肺気腫や間質性肺炎などで、肺からの空気漏れが起こる難治性気胸。肺機能の低下によって手術が困難になった場合、空気漏れの原因になっている気管支の枝を探し当て、気管支鏡を使ってシリコーンの栓を詰める気管支充填(じゅうてん)術という治療法を、岡山赤十字病院(岡山市)の渡辺洋一・呼吸器内科部長が開発、実績を重ねている。

 シリコーンを使用

 きっかけは、1989年に渡辺部長らが診察した40代女性の難治性気胸だった。女性は糖尿病から敗血症を併発、肺炎などを起こし呼吸不全状態に。肺と腎臓の間が穴でつながり、肺の空気が腎臓の穴から漏れ、危険な状態に陥った。渡辺部長は、最後の手段で気管支充填術に挑んだ。

 当時、気管支に固形物を入れるのは感染症を引き起こしやすいとして“禁じ手”だった。そこで最もトラブルの発生確率が低いとみられる固形物にシリコーンを使った。シリコーンは、歯型を取る歯科の間では既に使われていたので、リスクは低いと考えたわけだ。

 渡辺部長は、シリコーンを材料に手作りで充填材を作り気管支に詰めた。すると空気漏れが止まり肺炎が治った。その後、女性は回復して退院、現在も健在という。

 以後、渡辺部長はシリコーンを練って充填材を手作りして充填術に磨きをかけて、安全性と有効性を確認した。国内の医療器具メーカーに製品化を働き掛けたものの、高コストを理由に断られ、フランスの医療器具メーカーで2000年に製品化した。製品名は「EWS」。Wは渡辺部長の頭文字。ただ厚労省が輸入販売を承認していないため、医師が個人輸入して使っている。また独自に作っている施設もあるという。

 欧米に比べ日本の喫煙率は高く、高齢者を中心に慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の患者が増えている。COPDの高齢者は、肺全体が弱く、最も弱い部分が破れやすい。手術で防ぐのは難しく、空気漏れが続くことが少なくない。

 空気漏れを止める

 一般的には胸腔(くう)に管を入れて、肺から漏れた空気を吸引。肺が広がって穴が自然に閉じるのを待ったり、胸腔のすき間を薬剤で癒着させて漏れを止める。ただ空気漏れが激しいと、管を入れても、肺が広がらずに癒着させられない。また吸引を長く続けると、肺炎を起こしたり、もう一方の肺に穴が開くこともある。

 一方、EWSは長さ1センチの円筒形。直径5ミリと6ミリ、7ミリの3タイプがある。細かく枝分かれした気管支から、漏れている枝を探し出してバルーンで閉じる。その後、気管支鏡の鉗(かん)子でEWSをつかみ、口から入れて漏れている部位に固定する。局所麻酔の下、処置時間は15分〜50分程度かかる。

 欧州では難治性気胸の標準治療になっている。国内では現在、大学病院など84施設ほどが導入しており、既に1000人以上の患者に試みられたとみられる。渡辺部長によると、患者の8割以上で空気漏れが消失または減少、重い合併症も起こしていないという。

 渡辺部長は言う。「難治性気胸の患者にも、きちんとした治療が簡単にできる状況になってほしい。そのためにも、厚労省には一日も早くEWSの輸入販売を承認してほしい」。

  (熊本日日新聞2006年6月14日付「夕刊メディカル」)

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