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コミュニケーション苦手な軽度発達障害 集団心理劇療育に効果
 自己表現やコミュニケーションの苦手な「アスぺルガー症候群」や「高機能自閉性障害」などの子どもが増えつつある。そうした子どもたちへの療育が課題とされる中、熊本大教育学部付属教育実践総合センターの高原朗子助教授(障害児心理学)が研究している集団心理療法の「心理劇」が効果を上げている。

アスペルガー症候群
 「社会性」「コミュニケーション」「想像力」の分野に障害がある。言葉の遅れがないため、幼児期には診断されにくい。特定の物事に強いこだわりを示し、単純な記憶などが得意だが、その場の雰囲気を読むことや人に合わせることが苦手。
高機能自閉症
 行動障害の自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わない状態。「社会性」「コミュニケーション」「興味関心が狭く特定のものにこだわる」などの障害はアスペルガー症候群と同じだが、「言葉の発達の遅れ」があるのが特徴。
 心理劇は即興劇の形態をとる。シナリオはなく、参加者は与えられた役割を即興的に演じる。創造性や自発性を育み、他者への理解を深めることに効果があるとされる。主に精神医療や少年院などでの矯正技法として実施され、神戸の小六児童殺害事件の加害少年の矯正に用いられたという。

 高原助教授は1990(平成2)年、当時副園長を務めていた福岡市の知的障害者更生施設で、知的障害が重度の自閉症者や高機能自閉性障害者から、アスペルガー症候群など軽度発達障害のある人までを対象に、心理劇を使い始めた。

 心理劇は(1)架空の世界のため自己表現しやすい(2)集団で行うので社会性向上につながる(3)同じような症状のある人のグループで互いを理解し、成長する―と考えてのことだった。

 しかし当初は、人とのコミュニケーションが苦手な自閉症児などへの療育は一人一人の特性に応じて個別に対応する方法が主流だったため、一部の専門家からは「集団で実施する心理劇は不適切で、効果がない」と批判されたという。

 高原助教授の心理劇はまず、同程度の障害のある人たちを2〜10人ほどのグループに分ける。専門家が「監督」となり、劇のテーマ設定や進行役をする。治療を受ける人を「主役」、ほかの障害を持つ人やスタッフが「演者」や「観客」となる。体操やゲームでウオーミングアップした後、旅行や買い物など楽しかった思い出から家族や他人との間で感じているストレスなどをテーマに演じ、感想を話し合う。役割を交代しながら1、2時間ほど繰り返す。

 これまで5歳から40歳代まで延べ約200人を対象に実施。2003(平成15)年に心理劇を3年以上続けている人を対象に効果をまとめたところ、軽度発達障害の人に対しては、他人とのかかわり方や手段(対人的相互反応)が向上、自発的な感情表現(情動表出の変化)に効果があることが分かった。

 「始めてから半年ぐらいから効果が出始めるようだ。それまで他人との会話が苦手だった子が『困っている』など自分の感情を表したり、『感謝してます』と気遣いもできるようになったりする。子どもたちはより豊かな生活を過ごせるようになる」と高原助教授。

 心理劇による療育は、対象の子どもたちの特性を知る専門知識を持った援助者が不可欠で、劇をするためには複数のスタッフが必要という課題はある。

 高原助教授は「今後はもっと研究を深め、軽度発達障害を持つ人だけでなく、不登校の子どもたちや子育てに悩む母親などの心のケアなどにも応用していきたい」と話している。

自閉性障害者の状態に応じた心理劇の効果
  重度知的障害を伴った自閉性障害 中度知的障害を伴った自閉性障害 高機能自閉性障害 アスペルガー障害
状態評価
(援助者の見立て)
対人的相互反応の向上
(個人の外的変化)
言語表出の促進
(個人の外的変化)
不要
問題行動の抑制
(個人の外的変化)
社会性の育成
(個人の外的変化)
情動表出の変化
(個人の内的変化)
心理療法
(個人の内的変化)
 ◎効果大 ○効果あり △事例によって効果 ▲効果あまりなし − 評価不能 

 (熊本日日新聞2005年3月31日付朝刊くらし面)

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