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軽度三角頭蓋手術 発達障害の深刻化防ぐ
 自閉傾向や多動といった発達障害児の中で軽度の三角頭蓋(ずがい)の子供は、手術で三角頭蓋を治療すると、障害の進行を食い止めたり、改善したりするケースが多いことが、沖縄県立那覇病院(那覇市)の下地武義副院長(脳神経外科)らの研究で分かってきた。

 手術による発達障害の治療効果をめぐっては、学会の定説は定まっていないが、下地副院長は「手術を施すと、放置した場合に比べ、少なくとも障害の深刻化を防げる可能性が極めて高くなる」と言っている。

 三角頭蓋は、前頭骨の前頭縫合が先天的に閉じているため額が狭く、頭頂部からみると頭が三角形にみえることから、こう呼ばれる。前頭縫合は生後四カ月ぐらいまでに開き、二歳ぐらいまでに閉じるのが普通だ。

  知能指数97に

 下地副院長が、軽度の三角頭蓋の手術を初めて手掛けたのは一九九四年十月。患者は二歳の男児。形成目的だったが、まったく話せなかった男児が、術後に話し出し、多動傾向も減ったという。ところが、他の合併奇形を伴わない軽度の三角頭蓋は、臨床症状は現れないというのが定説になっている。

 このため下地副院長も半信半疑で症例を重ねていたが九八年三月に手掛けた七例目の三歳女児の手術後、軽度三角頭蓋と発達障害の因果関係を確信したという。女児は立てない運動遅滞障害と精神遅滞障害があった。心理テストでは臨床心理士の指示にまったく従えず自閉的で知能指数も算出できなかった。

 女児は両側前頭葉の血流が低下していたため、頭蓋の形成手術をし、こめかみのへこんだ部分や額を平たんにした。その一カ月後、心理テストをしたところ、心理士とのコミュニケーションがうまくいき、知能指数は六十七だった。そのころ歩けるようにもなった。

 その後、女児は言葉も明りょうになった。ただ知能指数は術後一年間は六十台で低迷。九九年四月、保育園に入園して急成長、同十月の心理テストで知能指数は九十七に伸びた。

 下地副院長が日本小児神経学会に提出した論文では、この女児を含め二〇〇〇年七月までに二歳から八歳までの発達障害を伴う六十五人に三角頭蓋手術をした結果、六十一人が何らかの症状改善を示し、特に行動異常の改善が際立ったという。

  療育が大切

 下地副院長は、その後手術した患者も合わせ計百五人の手術前後の発達判定(DQ)診断の結果を比較した。プラス21以上十一人、プラス20〜11十四人、プラス10以内二十三人、変化なし三人、マイナス10以内四十七人、マイナス20〜11六人、マイナス21以下一人。変化なしを含め54・3%は改善がみられなかった。

  「しかし」と下地副院長。「プラスマイナス10以内に七十三人いることに注目してほしい。この割合が高いことは、一般的に言うと、そのまま放置していたら確実に数値が落ちる状態の子どもたちが、状態を維持していることになる。手術は頭蓋変形で窮屈になっていた脳をリラックスさせる手段にすぎない。その後の療育が大切で、場合によっては健常児程度まで改善する可能性がある」と指摘する。

 沖縄県の症例から、下地副院長は全国では約一万人の類似患者が放置されているとみている。「診察で最も重要なのは、額に触れて骨の盛り上がりを確認すること。何らかの発達障害があり、骨が盛り上がっているなら三角頭蓋の手術対象になる可能性が極めて高い。ただ、この手術は八歳になると効果がかなり低くなってしまう」。下地副院長は、そう指摘する。

 (熊本日日新聞2004年3月3日付夕刊)

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