くまにち.コム  
3大生活習慣病やこころ、こどもの病気など、最新治療法や先端医療の現状をお伝えします。  
   
ホーム > 読むクスリ > こども一覧 >   
読むクスリ
メール健康相談
休日在宅医 お役立ちリンク
お知らせ
フリーワード検索

     
肥後医育塾
笑顔ヘルCキャンペーン
メディカルネット
 
デリすぱホームドクターガイド



ミトコンドリア病 治療と予防にアルギニン有効
 特定疾患(難病)ではないものの、それに近い疾患に「ミトコンドリア病(ミトコンドリア脳筋症)」がある。症状は多様だが、患者の60%〜70%は三大病型に属するとされる。小児から十歳代にかけて発症例が多い「メラス(MELAS、脳卒中様症候群)」は、三大病型の中で最も多く、脳卒中に似た症状が現れる。

 このメラスにはアミノ酸の一つであるアルギニンの投与が治療や予防に劇的な効果があることを、久留米大病院(久留米市)の古賀靖敏・小児科助教授が世界で初めて突き止めた。厚生労働省も「小児期発症のミトコンドリア脳筋症に対する新しい治療開発に関する研究班」を設置した。

  見逃しやすい

 「メラスは、小児期の患者が症状をうまく表現できないため見逃しやすい。頭痛や難聴、低身長、吐きやすさ、運動おんちなどがあり、母親系統に片頭痛や糖尿病などがあれば、一度はミトコンドリア病を疑う必要がある」。同研究班長の古賀助教授は指摘する。

 ミトコンドリア(細胞内小器官)は、体の細胞中にあり、そのエネルギーをつくる。細胞の核DNAとは別に、独自のDNAを持ち、母親からだけ子供に遺伝する。細胞の核DNAと比べ、その複製に間違いが多いとされる。約一万六千ある塩基配列のうち、既に百八十カ所以上の点変異が判明している。点変異の場所次第では、遺伝子に不具合が起こり、エネルギーづくりに影響が出ることもある。

  メラスは32%

 ミトコンドリアの異常は、特に細胞内でエネルギーを大量消費する脳・中枢神経系や筋肉の病気となって現れやすい。いろんな臓器に障害が出ることも多く、日本では糖尿病を含めると患者は十万人を超えるとも言われる。ただ古賀助教授は「糖尿病患者約六百五十万人の二割(百三十万人)はミトコンドリア病だろう。しかし症状が多様で専門家が少なく診断が難しい。片頭痛持ちや低身長のミトコンドリア病患者は、どのぐらいか分からない」と話す。

 研究班は、世界初の全国規模でミトコンドリア病の患者を調べた。七百五十一例の報告があり、うち二百四十一例(32・1%)がメラスだった。フィンランドの地域調査では、メラス型の変異を持つ人は人口十万人当たり一六・三人という。

  国際臨床試験

 「メラスの平均像は、小学校高学年で脳卒中の小発作を起こし始め、何回か大きな発作を起こして脳が損傷し、生活の質(QOL)が落ちて死に至ることが多い」と古賀助教授。小発作の症状は、目のちらつき(後頭葉の血流低下)、半身けいれん、一過性の失明などがあるという。

 古賀助教授は一九九五年、十二歳(当時)の少女が、脳卒中様の発作時に血中のアルギニン値が非常に低いことに気付いた。別のメラスの子供が大きな発作で意識不明の状態になった時、体重一キロ当たり〇・五グラムのアルギニンを静脈注射すると約三十分で発作が収まり、一日でほぼ回復させることに成功した。

 アルギニンを投与すると、狭くなって血流が通りにくくなった脳血管などを押し広げているとみられる。「私がこの二年半の間に治療した六例の患者に限ると、アルギニンは発作にもよく効くが、経口投与して発作予防に使う方がより有効だ」と古賀助教授。

 日本だけでは患者数が少ないため、七月にオランダで開かれる会議で、日、米、英、露、伊五カ国の共同臨床試験を提案。足並みがそろえば試験に入り効果を確認、アルギニンをメラス治療薬として厚生労働省に承認申請する考えだ。

 (熊本日日新聞2004年3月24日付夕刊)

※ この記事へのご意見、ご感想をお寄せください。
あて先は iryou@kumanichi.co.jp

 
  無断転載は禁じます。
掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。
Copyright Kumamoto Nichinichi Shimbun
  (c) 熊本日日新聞社 〒860-8506 熊本市世安町172