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注意欠陥/多動性障害 原因不明、小学生に多く発症
 「AD/HD」。最近、よく耳にする子どもの病気で「注意欠陥/多動性障害」と呼ばれている。ただ、どんな症状で、どういう治療をすればいいかは、まだあまり知られていない。そんな中、福岡市医師会がこの病気を平易に解説した『注意欠陥/多動性障害―その理解と対応のために―』を発行した。

  「子育てする家族の方から『うちの子は落ち着きがない』『我慢できずに、すぐ投げ出してしまう』『物忘れが多い』といった訴えをよく聞く。こんな特徴は、小さい子どもには多かれ少なかれあるが、特徴が強い子どもたちの中に注意欠陥・多動性障害の子どもがいる」。著者の一人で九州大医学部精神科の吉田敬子講師(児童精神医学)は、そう指摘する。家族や学校の先生にとどまらず、子ども自身もどうしたらいいか困っているケースも少なくない。

  三つの特徴とタイプ

  吉田講師によると、AD/HDは大きく分けて三つの特徴がある。まず不注意(注意欠陥)。自分に面白くないことや興味のないことをする時、やる意思や続ける根気が足りない。特に興味を持たないことに取り組んでいる時や、同じ作業を何度も長時間、繰り返す場合に目立つ。集中力が持続せず、作業終了前に別のことを始めるなどの行動をし、いったん気がそれると元の作業に戻るのが難しい。

  次に多動性。必要もなく足を動かしたり、物をたたいたり、いすをゆすったり、といった症状だ。三つ目は衝動性。例えば、ゲームの時にルールは分かっているが、順番を待てない。突然、自分の思い付いた話を始めて、他人の話を邪魔する。周りの状況を判断できず、自分をコントロールできない。

  タイプは三つに分けられる。多動や衝動性などの特徴が目立たない不注意優勢型。多動で衝動的な多動・衝動性優勢型。年少者に多い。双方が現れるのが混合型で、大半はこのタイプだ。

  小児期の3〜7%

  症状は三〜四歳からみられることが多く、遅くとも五〜七歳までに出現。多くの場合、症状が現れ数年後に家庭や学校で問題が表面化する。集団活動をする、退屈な課題をする、一人で課題をする、そんな時に症状が目立つ。課題を午前中に済ませる、興味ある課題に取り組む、集団でなく一対一で活動する、そんな際は症状が現れにくい。

  AD/HDの子どもの数は小児期で全体の3〜7%。小学生が最も多く四十人クラスなら一〜二人いるとされる。ただ研究が進んだのはここ二十年ほどで、原因は不明だ。@妊娠中の喫煙や習慣的なアルコール摂取A早産や低体重児B出生後に脳に損傷を受けた乳幼児などのほか、遺伝的要因が関連しているという。しかし、親のしつけ不足や愛情不足は原因ではないとみられている。

  問題なのはAD/HDの診断。さらに重症度の評価も要る。症状が強く、子どもと家族や先生、友達など周辺との摩擦が大きければ、治療が必要になる。吉田講師は「AD/HDはどこでも現れている。子どもの行動を家族と学校の教師の双方が協力して、じっくり観察していくことが、AD/HDの診断には大切」と話す。

  米では新薬登場

  重症化すれば、薬物療法が有効な場合もある。日本では現在、脳機能の一部を刺激する中枢刺激薬「リタリン」が標準薬だが、集中力が続くのは四〜六時間。

  一方、米国では非中枢刺激薬「ストラテラ」が一月、AD/HD治療薬として発売された。AD/HDの子どもの50〜70%は成人後も症状の一部が続き対人関係などで苦労しているという。この新薬はそんな成人にも使われ、この四カ月近くで売り上げを急速に伸ばしている。

  本の価格は五百円。(電)092(852)1504福岡市医師会医務課。
    
◇                  ◇
 
  AD/HDの診断基準 

A.(1)か(2)のどちらか:

(1)以下の不注意の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で発達の水準に相応しない。

 不注意

  (a)学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす。
  (b)課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である。
  (c)直接話しかけられたときにしばしば聞いていないようにみえる。
  (d)しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない。
  (e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
  (f)(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、または嫌々行う。
  (g)(例えばおもちゃ,学校の宿題,鉛筆,本,道具など)課題や活動に必要な物をしばしばなくす。
  (h)しばしば外からの刺激によって容易に注意をそらされる。
  (i)しばしば毎日の活動を忘れてしまう。

(2)以下の多動・衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月以上続いたことがあり、 その程度は不適応的で発達の水準に相応しない。

  多動性
 
  (a)しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじとする。
  (b)しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
  (c)しばしば、不適切な状況で、余計に走り回ったり高いところへ上がったりする(青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかも知れない)。
  (d)しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
  (e)しばしば“じっとしていない”またはまるでエンジンに動かされるように行動する。
  (f)しばしばしやべりすぎる。

  衝動性
 
  (a)しばしば質問が終わる前にだし抜けに答えてしまう。
  (b)しばしば順番を待つことが困難である。
  (c)しばしば他人を妨害し邪魔する。
  (例えば、会話やゲームに干渉する。)

B.多動・衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。

C.これらの症状による障害が2つ以上の状況(例えば、学校と家庭)において存在する。

D.社会的、学業的または職業的機能において臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。

E.その症状は広汎性発達障害や精神分裂病などの他の精神疾患で説明されない。

(DSM―Wより)

 (熊本日日新聞2003年5月7日付夕刊)

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