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発達障害者支援法 施行から1年 「理解の輪」広がり まだ半ば
 授業で席に座っていられないといった症状を示す注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的発達や言葉の遅れはないがコミュニケーションがうまくとれないアスペルガー症候群―。こうした発達障害の子供を支援する法律が昨年4月に施行されたが、道は開けたばかり。脳機能の障害が原因とみられているのに、学校側の協力が得られなかったり、子供がいじめの対象になったりするケースも。理解の輪は広がるのか。

 「プログラム1番『青い山脈』。リクエストした三苫さまは、この曲を聴くと幼いころを思い出すそうです。それでは、お聴きください」

 今年3月、阿蘇郡内のデイサービスセンターで、中学生のヒロキ(13)はステージに立ち、レコードに針を落とした。会場に懐かしいメロディーが流れる。集まったお年寄りは体を揺らしたり、指でリズムを取ったりした。自然と口ずさむ人もいた。

 ヒロキは“昔の歌”が大好き。昨年末に亡くなった祖母の影響だ。流行の歌よりも「いつでも夢を」や「高校三年生」に魅せられる。SPレコードや蓄音機も持っている。自慢のコレクションを説明する口調はどこか大人びている。

 高機能自閉症は知的な遅れがないため分かりにくい。ただ、アクシデントに弱く、時折、周囲を驚かせる。

 こんなことがあった。学校の給食の時間、塩ザケを皿に乗せる時に少しだけ身が崩れた。その途端、ヒロキはそばにあった先生のご飯をぐちゃぐちゃにしてしまった。

 「ヒロキのことを地域の人に理解してほしい」。母親のユウコ(50)は、ヒロキの趣味を生かしたレコードコンサートを思い付いた。担任の先生も協力し、同級生2人も進行を手伝った。

 コンサートが中盤に差しかかったころ、レコードに針を落とすヒロキの手が震え、雑音が響いた。その瞬間、感情の針が振り切れた。ヒロキはいつものように目の前のプレーヤーやレコードをぐちゃぐちゃにした。

 ユウコはいったんヒロキをステージの外に連れ出し、マイクを持った。「ヒロキは心の不安にちょっとだけ負けてしまいました。驚かれたと思いますが、これもヒロキなんです」

 ユウコはこの地域でヒロキを育てていこうと決めている。「『変わってる』で済ませてほしくない。障害も含めてヒロキを丸ごと受け入れてくれる地域をつくるため、小さなことからやっていきたい」=文中仮名
 (田川里美)

 (熊本日日新聞2006年4月18日付朝刊)

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