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情動に働き掛ける音楽療法
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| ◇わだ・れいこ 武蔵野音楽大学音楽学部声楽科卒、久留米大学臨床心理学修士課程修了。2001年3月、音楽療法士の認定取得。04年4月から現職。山口県出身。福岡県久留米市在住、46歳。 |
音楽を使って心身障害の回復や機能の改善を試みる、心理療法の一形態である音楽療法。10年ほど前から国内で注目を集め、医療や福祉の現場で治療として取り入れられている。主に発達障害児の治療を手掛けている平成音楽大学音楽療法情報センター講師で音楽療法士の和田玲子氏に音楽療法の進め方や可能性について聞いた。(岡本幸浩)
―音楽療法を受ける対象者や進め方は。
「音楽療法は認知症のお年寄り、言語や心身の発達遅滞児、知的障害児などに施される。人間の耳から入る聴覚情報は感情をつかさどる脳の扁桃(へんとう)体に直接、刺激を与えることは分かっていて、言葉は理解できなくても音刺激で情動に働き掛けることで持っている機能を高めたり生活の質を高めることを目指している。音楽はいわば治療の道具。一般の人たちが癒やしを求めて音楽を聴くのとそこが違う」
「数年前、当時小学6年生だった自閉症の女児の治療に携わった。自閉症児は他人や新たな刺激を恐れるので、まずは私との信頼関係を1年ほどかけて築いた。同時に一緒に歌ったりピアノを弾くといった音刺激が楽しいものだと意味づけしていき、音楽を通したコミュニケーションを図った。重度の自閉症だったが、3年後には学校で友達とのコミュニケーションが成立するようになった」
―使う音楽は特別なものなのか。
「そんなことはない。バッハやモーツァルトなどの作った癒やし系の曲は理論的に音の構成が安定していて誰が聴いても心地よいのだが、治療にそのまま使うことはほとんどない。子どもたちが受け入れやすくて治療に適しているのは、音の構成が簡単で歌詞が短い童謡や即興音楽などだ」
「ただ選曲は治療対象児の母親が好む音楽も重要で、民謡を使ったこともある。要は対象者のバックグラウンドの音楽は何かということ。超低体重で生まれ、目の見えない1歳の幼児の治療に際してこんなことがあった。母親は赤ちゃんに市販の童謡を聴かせていたが、無表情のままだった。それが治療のために用意した曲に合わせて母親に歌ってもらったら、途端に笑うようになった」
「人間は胎内にいる時から聴覚の発達が始まっていて、母親の声を認識している。赤ちゃんが安心感を覚える音や音楽は胎内での環境が左右しているのではないか。さらに、遺伝情報として両親から受け継ぐことも考えられる」
―研究や治療を行う上での問題は。
「音楽療法士は現在、学会の認定資格(5年ごとに更新)で、国家資格ではないため臨床での実験・研究には限界がある。科学的データを十分に得られず、経験的な判断に基づく治療が中心なのが現状。試行錯誤の連続だ。ただ、社会構造の変化などで音楽療法のニーズは今後ますます高まるだろう。そのためにも治療の成果を科学的に究明し、治療の発展につなげられるような環境整備を進めることが必要と思う」
(熊本日日新聞2005年11月14日付朝刊科学面「フロント・ランナー」) |
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