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発達障害の理解深め支援を 当事者のNPO理事長が講演
 不注意や多動性、衝動性といった特性がある注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある人への支援などを定めた発達障害者支援法の施行から1年がたとうとしているが、周囲の理解はまだ十分とは言えない。そんな中、発達障害への理解を深めるセミナーがこのほど県庁で開かれ、ADHD当事者が子どものころ欲しかった支援などについて語った。

講演する注意欠陥多動性障害(ADHD)当事者の白井由佳さん=県庁
 「4歳まで会話がなく、幼稚園に通い出すと今度はしゃべり過ぎに。落ち着きがなく、忘れ物ばかり。不器用で折り紙の時間に人生最初の挫折を味わった。鉛筆で文字を書くときも筆圧が調整できず、しんがポキポキ折れてノートは真っ黒になった」。セミナーで講演したNPO法人大人のADD&ADHDの会理事長の白井由佳さん(38)=札幌市=は、幼いころから苦労の連続だったという。

 社会人になっても苦労は続いた。「コピーやお茶くみなどの簡単な作業ができない。事務職は向かないと思い、ツアーコンダクターに転職。最初は楽しいが、慣れてくると自己管理できなくなって仕事をサボる。そうやって転職を繰り返した」

 その後結婚したが「一日中家にいても掃除や洗濯が終わらず、夫にしかられた」。出産すると家事と育児の両立はさらに難しく、2年で離婚。仕事もできず、家庭も営めなかった自分を責め、深いうつ状態に陥った。

 そんな白井さんを救ったのは、書店で何気なく手にした1冊の本。「ADHDの特徴が書いてあり、すべて自分に当てはまった。これまでの生きにくさの原因が分かり、『自分はダメ人間なんかじゃない』と心がすーっと晴れました」。ADHDと共存しながら、人生をやり直そうと前向きになれたという。

 33歳でADHDの診断を受け、その年の8月、発達障害者を支援するホームページを開設。翌年には当事者活動を展開するために同会を設立した。現在は講演などを通して当事者にしか分からない発達障害のある子どもたちの感情や行動を、「元・子ども(ADHD当事者)」として保護者らに伝えている。

 「子どものころに適切な支援が受けられないと、成功体験が少なく自己評価が下がる。精神障害や引きこもり、ニート、借金などの二次障害を引き起こし、『困った大人』になるリスクもある」と白井さん。

  今回のセミナーでも当事者アンケートの結果を紹介。子どものころ欲しかった学校のサポートとして「音や光など感覚過敏に対する配慮と対策」「個人のペースに合った勉強と休息」「教室以外の居場所」などを挙げ、家庭には「家族団らんや楽しい時間」「学校を休む権利」などを求めた。

 「一番教えてほしいのは、発達障害があると客観的な見方ができにくいため考え方がゆがみやすいということ」と白井さん。そして、「問題が起きたときは誰が困っていることなのかを考えてほしい。意外と保護者だけが困っていることもある。親の理想を押しつけず、子どもの『ありのまま』を受け入れてほしい」と訴えた。

 ※大人のADD&ADHDの会のホームページはhttp://www.adhd.jp/


  モデル地域を県指定 個別に支援計画作り

 発達障害者の乳幼児期から成人期までの一貫した支援体制を整備しようと県は新年度、モデル地域を指定して個別の支援計画作りを進める。発達障害支援コーディネーターを配置し、進学や就職などライフステージごとの課題に応じた援助プログラムを作成。必要に応じて評価や見直しを行い、そのノウハウを県全域に広める。

 本年度は発達障害を解説したパンフレットを作成。自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性や、かかわり方のポイントなどを紹介している。3月末までに1万部を作成し、市町村の窓口や福祉・教育機関、保育所などに配布する。

 一方、発達障害に関する相談を受け付けている県自閉症・発達障害支援センター(菊池郡大津町)は、発達障害者支援法の施行に伴い名称を「県発達障害者支援センター」に変更。現在、愛称を募集している。愛称とその由来、所属、名前、電話番号を書いてファクス=096(293)8239=またはメール(shien@basil.ocn.ne.jp)で応募する。問い合わせは同センター(電)096(293)8189。

 (熊本日日新聞2006年3月21日付朝刊くらし面)

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