



|
| 気づきにくい「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」 |
 |
 |
 |
知的な遅れがないため障害のあることが分かりにくい高機能自閉症やアスペルガー症候群の子どもたち。周囲の正しい理解や支援がないと、いじめや不登校につながるという。日本自閉症協会県支部の高機能・アスペルガー部会はこのほど、熊本市手取本町のくまもと県民交流館パレアでセミナーを開催。長崎大医学部保健学科の岩永竜一郎助教授が障害の特性や支援方法について講演した。
 |
| 着替える手順を示した図。文字やイラストなどを使うと、高機能自閉症などの子どもたちも理解しやすいという=熊本市の小学校 |
高機能自閉症とアスペルガー症候群は、ともに自閉症スペクトラム障害(ASD)に分類される。ASDの診断基準は(1)対人的相互作用(社会性)の障害(2)コミュニケーションの障害(3)行動と興味の範囲が狭く限られる―の3点で、知能指数(IQ)が70以上あれば高機能自閉症、知的障害と言葉の遅れがなければアスペルガー症候群。総称して高機能ASDと呼ぶ。
■俺ルール
高機能ASDの特性の1つに「共感性の欠如」がある。相手の気持ちを自分なりに読もうとするため、読み違えることが多い。次第に「俺(おれ)ルール」を作る人もいて、放っておくと修正は難しいという。
岩永助教授によると、「俺ルール」とは次のようなこと。「彼女が欲しい」と思い、好きな女の子に声をかけたが相手にされなかったとする。その男性は「自分の顔がおかしいからだ」と考え、「世の中の女は男を顔で判断する嫌なやつらだ」と決め付ける。「そのままにしておくと思考がエスカレートする。早めに正すことが大事です」と岩永助教授。
「穏当を欠いた接し方」という特性もある。相手との上下関係がつかめず、目上の人に横柄な口調で話したり、「ごめんなさい」と言いつつも平気な顔で漫画本を見ていたりする。葬式の最中に笑っていることもあるが、本人に悪気はない。
また、相手の言うことを文字通りに理解するため、電話で「お母さんいますか?」と言われても「はい」と答えるだけで母親に代わることまでは思い付かない。文字でのコミュニケーションが得意で、会話は苦手なのにメールだと冗舌になるなどの特性もある。
■文字や絵で
こういった特性は就学後、いじめの原因になることが多い。岩永助教授は「いじめから不登校や引きこもり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを引き起こすことがある。もともとの障害より、そのことが深刻」と指摘する。
思春期以降は反社会的な「行為障害」が現れることもある。「いじめなどの影響で周りの人に不信感を抱くようになる。また、自分の行為が社会的にどのような意味を持つのか理解できないので、気になる人にずっとついていってしまい、ストーカーと間違えられるといったこともある」という。
「このようなトラブルを起こさないためには、小学生のうちに適切な支援を開始することが大事」と岩永助教授。「知能が高くても話し言葉を理解できない子どもがいる。授業では文字や絵など視覚情報を活用して理解を助け、いじめの原因を作らない。『教科書の三十五ページを開いて』と言って、黒板にも『35ページ』と書くだけでもいい。時間割もイラストなどで分かりやすくし、見通しを持たせると安心する」と話す。
また、「いじめを防ぐには休み時間の支援が重要」と岩永助教授。不登校になった場合は「間違っても『休みたいだけ休みなさい』などと言っては逆効果。価値観が違うので焦りは出てこない。『行かなくてもいいんだ』と思うだけ」。健常児とは異なる支援が必要になる。「本来の障害は小さくても、周囲の誤解や誤ったかかわりが大きな問題に発展させてしまう」と岩永助教授。「支援を続ければ、それらの問題は最小限に抑えられる。周囲の子どもたちの理解と協力も必要だ」と語った。
(熊本日日新聞2006年2月9日付朝刊くらし面)
|
|
 |
 |
 |
|
|