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新型インフルエンザ 医療現場の課題
  「病院には患者が次々に押し寄せ、パンク状態になる」と大流行を懸念する川名明彦国立国際医療センター医長。医療体制に関する指針を取りまとめたが、念頭に置いたのは「どうすれば混乱を減らせるか」だった。

 流行が始まったら、全国に約三百四十ある感染症指定医療機関などに「感染疑い」の患者を入院させ、可能な限り拡大を抑え込む。これには、備蓄タミフルをまず専門機関に集中し、適正使用を徹底させる狙いもある。

 患者が増え収容し切れなくなった場合は、対応を一般病院にも拡大。重症者だけを入院させ、軽症者は自宅治療に切り替える。病院入り口には「発熱外来」を設置。医師らが重症・軽症者を振り分ける「トリアージ」を実施し、限られたベッドや薬の有効利用を図る。

 「それでも人と資材が足りなくなる」とみるのは東北大の賀来満夫教授。「戦時医療さながらの混乱が起きる。最前線に立つ医療機関ごとに独自の準備が必要だ」

 県内で患者が発生した場合、県が指定した医療機関に搬送される。その中核となるのが熊本市立熊本市民病院(同市湖東)。ウイルスが室外に漏れ出ない病室(感染症病床)を十二床備えている。各地域には、荒尾市立荒尾市民病院、八代総合病院など九病院に合計三十六床がある。

 二〇〇三年に新型肺炎(SARS)が国内で広がった苦い経験を持つカナダでは一歩踏み込んだ検討が進む。オンタリオ州の医師らは、病院の集中治療室に収容能力を超す患者が運ばれると推計。患者が重症化し、助かる見込みがなくなった場合、望みがある患者の救命に人員や資材を振り向けるトリアージ手順を検討し、公表している。

 厳しい条件でもできるだけ多くの命を救うのが狙いで、似た手順は地震や大事故でも用いられる。国立病院機構災害医療センターの原口義座室長は「現実に医療スタッフはそうした厳しい決断を迫られるだろう」と予測するが「現時点では倫理的問題が大きく、国内で踏み込んだ議論をするのは難しい」と語る。

 今回の医療指針は「患者の激増にどう対応するか」が主眼で、医療関係者の多くが「議論の入り口」だと認める。米疾病対策センター(CDC)は既に、新型ウイルスの感染力や致死率の違いに応じた複数の対応策の検討を始めている。川名医長は「国内でも今後は複数の想定に基づく対策が必要。地域ごとに医療スタッフの訓練を行う必要もあり、課題はまだまだ多い」と話している。

(熊本日日新聞2007年5月4日付朝刊)
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