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新型インフルエンザ 対策の現状と課題
新型インフルエンザなど感染症の患者を受け入れる熊本市民病院の病室。室外に空気が漏れ出ないようになっている
 大流行すれば国内の死者が最大で約六十四万人と予想される新型インフルエンザ。厚生労働省は三月末、行政や民間が取るべき対策を盛り込んだ計十三項目からなる行動指針をまとめた。新型への変異が懸念される高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の感染者は増え続け、「脅威が近づいている」とみる専門家は多い。人々の想像を超える「見えない危機」にどう備えるべきか、新型インフルエンザ対策の現状と課題を探った。

 指針の特徴は、新型の患者が国内で発生した場合、流行を特定地域に封じ込めるのは困難だとして、感染拡大を少しでも遅らせることを目標に据えた点だ。

 拡大防止作戦の大きな柱はインフルエンザ治療薬タミフル。だが、異常行動問題で十代への使用が原則中止されたため、対策に微妙な影を落としている。

 新型は毎冬流行するインフルエンザと違い、ほとんどの人が免疫を持たないため爆発的に広がる恐れが強い。国は、医療機関の受診者を最大で約二千五百万人、死者は約六十四万人と推計する。

 拡大スピードは、流行初期の対応で大きく変わってくる。指針の一つ「早期対応戦略」では、最初に見つかった患者周辺にタミフルを集中投与し、学校閉鎖や集会自粛などの行動制限を組み合わせた作戦を盛り込んだ。

 患者が発生した特定地域を封鎖するなど、ウイルスの封じ込めも選択肢の一つとして挙げたが、厚労省は「日本の地理的条件や人口密度を考えると封じ込めは困難」と判断。患者の家族のほか学校、職場の全員にタミフルを予防投与することが作戦のメーンとなる。

 政府や都道府県などはタミフルを治療目的で二千五百万人分、予防投与に三百万人分備蓄する。

 タミフルをめぐっては、指針策定の最中に難問が浮上した。薬の服用と、高層階から飛び降りるなどの異常行動に関係があるのどうかが問題になり、通常のインフルエンザでは十代への使用が原則中止されたのだ。

 だが新型対策では、指針をまとめた専門家会議議長の岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長が「新型の致死率が高ければタミフルを使用する可能性が高く、備蓄を放棄する必要はない」と強調、備蓄政策は維持された。変異が心配されるH5N1型の致死率は約60%。通常のインフルエンザとは比較にならない高さだ。

 しかし、発病前の人への予防投与をめぐっては懸念の声もある。同会議の押谷仁東北大教授は「(タミフルへの不安が強い)今の状況では感染していない人に飲めと言っても難しいのでは」と話す。拡大を防ぐには対象の80〜90%に達する高い服薬率が必要。タミフルが受け入れられないと作戦が揺らぐことになる。

(熊本日日新聞2007年5月4日付朝刊)
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