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新型インフルエンザ対策 大流行阻止へ備えを
 世界的な流行が懸念される新型インフルエンザ。4月から世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局感染症地域アドバイザーに就任し、新型インフルエンザ対策の最前線に立つ葛西健氏(40)=宮崎県福祉保健部次長=がこのほど来熊した。いかにして大流行を防ぐのか、葛西氏に聞いた。

 ―高病原性鳥インフルエンザの死者が世界で100人を超えた。このウイルス(H5N1型)が、人から人へ感染する新型インフルエンザに変異する有力な候補に挙げられている。

 「現在の鳥インフルエンザは鳥から人へ感染することはあっても、人から人への伝染力はあまりない。家族など長時間一緒に生活するような間柄で、感染が疑われるケースが若干ある程度だ。ウイルスが細胞内部に侵入するための“カギの形”が人間と鳥とでは違い、人間には感染しにくいからだ。しかし、ウイルスは細胞内で変異する頻度が高い。人間への感染が小規模でも繰り返されると、そのうちに人間型に変異してしまう。今回の鳥インフルエンザはアジア内部で流行を封じ込めることに失敗した。感染は欧州、アフリカ諸国へと広がっている。WHOでは『爆弾の導火線に火が付いた状態』と考えている。新型インフルエンザの発生はもはや防ぎようがない。あとは流行をどう防止するかが、重要になる」

 ―鳥インフルエンザに感染した家きん類はほぼ死んでいるし、人の致死率も高い。

 「必要以上に怖がるのは禁物だ。ウイルスは、別の種類の動物への感染力を高めるように変異する際、その毒性を弱めることが多い。過去にも人類は数回、新型インフルエンザのパンデミック(大流行)を経験している。最悪の被害を残した1918年のスペイン風邪の日本での致死率は1・65%、57年のアジア風邪も0・79%と決して高くはない」

 ―インフルエンザは一般に空気感染するなど、感染力が非常に強い。

 「確かに十分な備えと注意が必要だ。パンデミックになると国民の4分の1が感染すると言われる。発病する人が急増し、社会的に混乱するだろう。宮崎県の調査では、電力供給に影響が出かねないことが分かった。設備メンテナンスの人手が確保できないためだ。トラック運送網も打撃を受ける。運転手不足となり主要・中核的なルートしか稼動しないだろう。また、他県からの支援も期待できない。熊本で流行する状況であれば、全国的にも流行しているだろう。流行は数週間から数カ月は続く。その間、各都道府県は独力で耐えなければならない」

 ―熊本県は2007年度までにインフルエンザの特効薬と言われるリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を15万4000人分備蓄。また、患者発生に備えた対応策を準備している。

 「国内で患者が発生しても、感染拡大を防ぐことはできる。患者は自治体が指定した病院に入院することになる。さらに家族、会社仲間など患者と接触した人たちにタミフルが予防投薬される。患者の周囲に“薬の壁”をつくり、感染を広げないためだ。鳥インフルエンザ発生地域から帰国後に発熱した人は保健所に相談してほしい。インフルエンザウイルスは口、鼻から侵入する。結膜炎も起こす。体に入ってくるウイルスの量を減らすことが大切だ。うがいと手洗いは今でも有効な予防手段といえる」

 ◇かさい・たけし 1990年、慶応義塾大医学部卒。WHO西太平洋地域事務局感染症対策医官、厚労省大臣官房国際課長補佐などを経て、04年から宮崎県福祉保健部次長。宮崎市在住。40歳。

  (熊本日日新聞2006年3月29日付朝刊)
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