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人工股関節のMIS手術 傷口小さく早期回復例も
 従来は一〜二カ月間の入院を強いられていた人工股(こ)関節手術が、小さな皮膚切開によるMIS(極小侵襲手術)では二週間程度で退院できる。筋肉や軟部組織への負担が小さく、リハビリテーション(機能回復訓練)も早期に開始できるという。

 翌日から歩行訓練

 今年三月、国家公務員共済組合連合会平塚共済病院(神奈川県平塚市)で八十歳の女性が、MISによる左足の人工股関節手術を受けた。午前中に手術し、午後にはつえをついて立てた。翌日から歩行器を使って歩行訓練、二週間後に退院した。女性は、六月中旬から七月下旬にかけて九州や四国を一カ月以上旅行し、西日本最高峰の石鎚(いしづち)山にある神社にも参詣した。最近も百二十段の石段を上ったがなんともなかったという。

 執刀した同病院整形外科の平川和男医長によると、MISでは、大腿(たい)部の股関節の近くの皮膚を斜めに約六センチ切開し、その傷口からさまざまな器具を使って、人工の股関節に置き換えていく。

 入院費用も安く

 従来の人工股関節手術では十五〜二十センチの皮膚を切開して骨に達していたが、MISの傷口は半分以下。その分、技術的に難しく、手術できる医師も限られる。時間も長くかかり、手術する医師の負担が大きい。執刀医の視野や操作も制限されるため、すべての患者に適応できるわけではない。

 「それでも患者にとってはメリットは大きい。皮膚の切開が大きいと、筋肉などを傷つけてしまうため、治癒するまでに時間がかかる。これまでの手術法では退院まで一〜二カ月かかり、入院費用もかさむ。ところが、MISでは全体でざっと百万円も安くなる計算」と平川医長は説明する。

 同医長が手術を受けた患者二十人を対象に実施したアンケートによると、これまで患者が感じた最も強い痛みを一〇として判定した結果、平均で手術一週間後に三・九、二週間後に二・二と痛みが和らぎ、六週間後には一・一と順調に回復。退院までの日数は平均で一二・八日と二週間を切っていた。

 早期にリハビリ

 これまでの手術では、術後二〜三日から二週間、ベッド上で安静に過ごし、歩行開始は三〜六週間後だった。これに対し、MISでは翌日から車いす、歩行器などで移動、三〜五日後には、つえを使って歩行が可能になる。痛みの少ない状態で早期にリハビリができ、合併症として出てくる可能性のある肺塞栓の予防にも役立つという。また院内感染などの可能性も低くなる。

 高齢社会の進展とともに増えている手術の一つが人工股関節手術。股関節の軟骨がすり減って、痛みで動けなくなるお年寄りも少なくない。股関節の形成不全による二次性変股症や大腿(たい)骨頭壊死(えし)、関節リウマチなどの治療法として年間二万七千例ほど実施されていると推定されている。

 人工股関節のMISは、整形外科用インプラントメーカーの米ジンマー社が中心になって開発、最近、急速に普及し始めている。ただ日本ではまだ限られた整形外科医が手掛けるにとどまっている。

 「現在のところMISに適さない症例もあったり、技術的に難しいなどの欠点もあるが、何よりも患者に優しいのがMIS。手術法や器具の改良に取り組んでおり、今後取り組む医師が増えるのではないか」。平川医師はそう予測している。

 (熊本日日新聞2003年9月3日夕刊掲載)
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