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世界中の視線集めるグレリン 拒食症治療に可能性
 成長ホルモンの分泌を促進するホルモン「グレリン」。国立循環器病センター研究所(大阪府吹田市)の寒川賢治・生化学部長らが一九九九年十二月、世界で初めて発見、構造決定した。その後、グレリンは、食欲増進や心機能改善などいろんな機能を持つことが解明され、世界中の視線を集めている。

 脳下垂体に作用

 グレリンはアミノ酸二十八個からなり、三番目のアミノ酸に脂肪酸が結合しているのが特徴だ。一九九六年に成長ホルモンの分泌を調節する新たな受容体が見つかり、各国でこれに結合する物質探しが始まった。しかし、なかなか見つからない。そんな中、寒川部長らが突き止めた。「脳にある」との予想に反し、ラットの胃にあった。次いでヒトの胃でも産生細胞が見つかった。

 寒川部長は「グレリンは特定の場所に特定の脂肪酸が結合して初めて機能する珍しい構造をしている。この特徴的な構造が成長ホルモンの分泌促進に不可欠」と話す。胃でつくられたグレリンは、血流に乗り脳下垂体に作用し、成長ホルモン分泌を促す。微量のグレリンを投与した直後から血中の成長ホルモン濃度は急増する。

 心機能が改善

 グレリンの受容体は脳下垂体以外にもあちこちにあり、他の機能もあるとみられていた。予想通り、心臓の拍出量の増加や血管拡張などの心機能改善、食欲増進、脂肪を蓄えるエネルギー代謝の調節など新たな生理作用が次々に判明した。

 食事時になるとグレリンの血中濃度は上がり、食べると減る。海外では、グレリンを投与された人の食事量は、投与されない人より30%増えたという研究結果が発表されている。

 同センターでは、重い心不全による栄養状態悪化で、悪液質と呼ばれる衰弱状態になった患者を対象に臨床試験を試みた。健常者への投与で安全性を確認。次いで患者に一回だけ投与した結果、投与しなかった患者に比べ、平均動脈圧が約10%低下し、一回の心拍で送り出される血液量も増えるなど、一時的に心機能が約25%改善されることを確認した。

 近く患者を増やし、最大で三週間程度グレリンを連続投与し、心機能と栄養状態の改善を確かめる。研究を進める心臓血管内科の永谷憲歳医師は「食欲が増進して栄養状態が改善され、成長ホルモンの増加で心筋が回復して心臓の収縮がよくなると期待している。患者の生活の質が向上し、治療の選択肢も広がる」と話す。

 骨の代謝改善も

 京都大付属病院探索医療センターも、グレリンを最初の創薬プロジェクトにした。期間は五年間。計画は策定中だが、最も注目されているのが拒食症治療への応用だ。グレリン創薬プロジェクトの赤水尚史助教授は「拒食症は治療薬がないだけに、効果があれば朗報。可能なら(臨床試験に)トライしたい」。

 がんや肝硬変、敗血症などによる悪液質の治療や骨粗しょう症など骨の代謝改善も有力な候補という。赤水助教授は「もともと体内にある物質だけに薬として臨床応用しやすく、適応症も多いだろう。日本で見つけた新規物質をきちんと評価し、治療薬を開発して花を咲かせたい」と意欲をみせている。

  (熊本日日新聞2002年4月23日付夕刊)
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