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| 再狭さく防止に遺伝子治療 血管内膜の新生、70%抑制 |
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動脈硬化で狭くなり、放置しておくと狭心症や心筋梗塞(こうそく)などにつながる心臓の血管を広げる冠動脈形成術。この治療で課題となる再狭さくを防ぐため、九州大循環器内科が遺伝子治療を計画している。肝炎や腎炎などの治療にもつながる可能性も秘めているという。
■炎症タンパク質
冠動脈形成術は、太ももの血管から入れたカテーテル先端の風船を膨らませて血管を広げる。血管のバイパス手術より手軽で患者の負担も小さい。年間の手術数は国内で約十五万例、世界では百万例以上に上る。
治療直後に血栓ができる急性冠閉塞(へいそく)は、血管内に網目状の筒(ステント)を入れることでほぼ解決した。残る課題が三〜六カ月後に起きる再狭さくだ。発生率は30〜40%。再形成術やバイパス手術が必要になる。
さまざまな遺伝子治療や血管内壁への放射線照射、抗がん剤成分が徐々に溶け出し細胞増殖を抑えるステントなどが研究されている。しかし、再狭さく防止の決め手はまだない。
血管の壁に脂肪がたまる動脈硬化も、傷ついた血管を修復しようとして起きる再狭さくも、実は血管が慢性炎症を起こした状態だ。この炎症を促進する物質の一つに、MCP―1と呼ばれるタンパク質がある。
これまでの研究では、傷ついたり、動脈硬化を起こした血管ではこのタンパク質が増えていた。一方、このタンパク質が働かないマウスでは、動脈硬化の発症が半分以下になることが分かっている。
■動脈硬化を抑える
九州大の循環器内科のチームは、このタンパク質を構成するアミノ酸のうち七個が欠落し、本来の機能を失った7NDと呼ばれる変異型に目を付けた。
これは生体内でMCP―1の働きを妨げる。遺伝的に動脈硬化を起こすマウスに7NDの遺伝子を注入すると、血管壁の脂肪が増えず、動脈硬化の進行を抑えた。急性心筋梗塞を起こしやすい不安定な脂肪の集まりも安定し、血栓や破裂が起きにくい状態になった。
サルの頚(けい)動脈を高コレステロール血症にし、カテーテルで傷付けた実験でも、7ND遺伝子を注入したサルは再狭さくにつながる血管内膜の新生が約70%も抑えられた。
治療は、7ND遺伝子を組み込んだプラスミドと呼ばれる環状DNAを筋肉に注射。筋肉細胞でつくられた7NDは血流に乗り、炎症が起きている場所でMCP―1の活動を抑える。サルを使った毒性試験の結果も問題なかった。
研究チームの計画では、冠動脈形成術を受けた人を対象に、体重一キロ当たり〇・五ミリグラムまで投与量を三段階に分け、計九人で安全性と毒性を評価。問題がなければさらに十一人に各〇・五ミリグラムを投与して調べることにしている。
この計画は既に学内審査を通り、厚労省の冠動脈遺伝子治療臨床研究作業委員会で審査中だ。研究チームリーダーの江頭健輔・講師=県立熊本高卒=は「動脈硬化や再狭さくだけでなく、肺高血圧症や肺線維症、肝硬変、腎炎、関節リウマチなど難治性の炎症疾患に広く応用できる。まず再狭さく防止で突破口を開きたい」と言っている。
(熊本日日新聞2002年6月4日付夕刊) |
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