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重い狭心症や心筋こうそくに“最終手段”
冠血管新生療法が成果 熊本大・川筋教授
川筋道雄教授
熊本大付属病院
(心臓血管外科)
虚血性心疾患で、血管の新生に強力に作用するタンパク質を外科手術で心筋に注射する治療法が成果を上げている。熊本市の熊本大付属病院の川筋道雄教授(心臓血管外科)が3年前から取り組み、これまで15人に実施。冠動脈バイパス手術が困難な患者の“最終手段”として期待を集めている。
冠動脈が詰まって酸素不足に陥る狭心症や心筋こうそくの治療は、軽度だと薬物療法が基本。進行すると、カテーテルで冠動脈を広げる治療や、最終的には細くなった血管の代わりに別の血管を縫い付けるバイパス手術が行われる。しかし冠動脈が枯れ枝状に細くなり、バイパス手術ができない患者もいる。
川筋教授が取り組んでいる「冠血管新生療法」はこの状況を打開する一つの方法。新しい血管を作る作用のある塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と呼ばれるタンパク質を血管が細くなった心筋部分に10〜15カ所、合わせて0.5ミリグラム注射する。川筋教授が2002年2月に国内で初めて実施して以降、今月2日に退院した67歳の男性まで同療法を受けた15人全員が生存しているという。
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副作用なし
同療法は京都大の倫理委員会も承認しているが、現在治療を実施しているのは熊本大だけ。冠血管新生療法にはbFGFの代わりに骨髄細胞を使う方法もあり、県内の医療機関も行っている。骨髄細胞はカテーテルで心室内から注射する方法も試みられている。
bFGFは人間がもともと極微量持ち合わせているタンパク質で、「注射によって自然治癒力を引き出す」と川筋教授は説明する。手術後、2―4週間で血管が増え始めて血流が増加。これまでの経過観察で、血管が止めどなく増えることはなく効果が持続していることを確かめた。副作用はないという。
bFGFは褥瘡(じょくそう)や皮膚潰瘍(かいよう)などの治療にも用いられているが、作用が強力なために冠血管新生療法には制約もある。血管を増やして増殖するがんや糖尿病性網膜症、腎機能が低下している患者には適用できない。
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将来は単独療法に
効果が現れない症例もあり、川筋教授の患者15人中3人は血管が新生しなかった。「原因は解明中だが、心筋こうそくで心筋が痛んでいたり血管が完全にふさがっていると新生しないようだ」。安全性確保のため熊本大の倫理委は現在、最低1本のバイパス手術をする条件で同治療を行うことを認めている。
ただ、「全体としては極めていい結果」と川筋教授は胸を張る。あと5例ほどバイパス手術との併用で結果を確かめ将来的には単独療法に踏み切りたい考えだ。
背景には、バイパス手術をしても再び動脈硬化を起こす人が少なくない現状がある。今月2日に退院した男性も、もとは狭心症で10年ほど前にバイパス手術を受け、今回が再手術だった。中には他県の医療機関で再手術は困難と診断され、すがる思いで熊本大を訪れた患者もいるという。
川筋教授は、bFGFの効果をさらに高める技術開発も進めている。ラットを使った実験では、ゼラチンにbFGFを溶け込ませて注射するとゆっくり染み出すために効き目が高まるとの結果を得ているという。
熊本大は同治療法を臨床試験として実施しており、費用の患者負担はない(バイパス手術は別)。川筋教授は「バイパス手術ができずあきらめている人もおり、早い時期に単独療法を確立させたい」と話している。(岡本幸浩)
(熊本日日新聞2005年8月24日付朝刊)
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