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「口腔ケア」に意識高めて 認知症の高齢者、周囲が気配りを
 口の中を清潔にし、かんだり飲み込んだりする機能を向上させる「口腔(こうくう)ケア」。介護予防に効果があるとして、来年4月の制度改正に伴い介護保険の給付対象となるが、介護者の意識はまだ低い。中でも本人が意識できない認知症(痴呆症)のお年寄りの場合、治療しないまま放置されていることもあるようだ。(田川里美)

介助を受けながら昼食を取る認知症のお年寄り。口腔ケアに力を入れることで食事を取れるようになったという=益城町の「元気ハウス青空」
  「なかなか食事を取ってくれないんです。食べたとしても、はしを使わず手づかみ。もう手に負えません」。今年8月、認知症の女性(77)が上益城郡益城町の小規模多機能住宅「元気ハウス青空」に入居する際、家族はこう訴えた。

 同住宅の母体である「いわた歯科」の岩田浩志院長(45)が診察すると、その女性の口の中は「ボロボロの状態」。根っこしか残っていない歯が10本もあり、歯ぐきがはれ上がっていたという。

 「治療するまで、はしやスプーンがちょっと当たるだけで、跳びはねるほど痛がった。とても食事ができる状態じゃなかったんです」と同ハウスの岩田小百合代表(37)。家族の同意を得て、根っこだけの歯をすべて抜くなどの治療をし、今では普通の食事が取れるほどに改善した。

 入れ歯に水カビ

 同ハウスは、介護の一環として口腔ケアに力を入れようと昨年8月に開設。入居の際は必ず口腔内を診察している。これまで入居した10人は全員、治療が必要。最も多かったのは入れ歯が合わない人で、長い間入れっぱなしだったため入れ歯が水カビで真っ黒になっていた人もいたという。

 岩田代表は「認知症の人は歯磨きすることを忘れ、介護者もそこまで気が回らない。かめなくて食が進まないのに、ただ食欲がないと思いがちなんです」と話す。

 家族の同意を得てから治療や入れ歯の調整に入るが、拒む家族もいるという。「治療をしないと食事が取れないと説明しても『そこまでしなくてもいいです』という家族もいます。1割負担の場合、1万円でかなりの治療ができるのですが」と岩田代表。

 治療前のお年寄りたちはミキサー食や刻み食しか食べられなかったが、治療を終えてからは軟らかめの普通食に移行したという。岩田代表は「目で見ておいしそうと感じ、ちゃんとかんで食べる。五感を働かせながら食べることは脳を刺激し、認知症の改善も期待できるのではないか」と話す。

 摂食・嚥下の訓練も

 介護現場での口腔ケアの現状について、県歯科医師会の入江英仁理事は「施設職員はその必要性を感じていても、忙しくて具体的に考えるゆとりがない。歯科医が施設から呼ばれることも増えてきたが、まだ少ない。在宅のお年寄りとなると、何のケアもされていないのではないか」と指摘する。

 認知症の場合、治療中に暴れるのではないかといった心配から、家族が遠慮して受診を控えるケースもあるという。宮坂圭太理事は「白衣を着た歯科医の前ではしっかりするお年寄りも多い。ダメだと決め付けずに受診してほしい」と話す。

 さらに、口腔ケアで栄養状態やコミュニケーションの改善を目指すには、歯科治療や口腔内の清掃だけでなく、物をかんだり飲み込んだりする摂食・嚥下(えんげ)機能の訓練が重要になるという。

 「摂食・嚥下機能については、歯科医の中でもその必要性の認識にまだ温度差がある」と入江理事。同会は11月から、歯科医や歯科衛生士を対象にした摂食・嚥下に関する実技研修を実施。来年4月の介護予防スタートに備え、歯科専門職全体の意識を高めることにしている。

 (熊本日日新聞2005年10月4日付朝刊くらし面から)

 
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