



|
| 口の中は細菌がいっぱい 抜歯の危険性認識を |
 |
 |
 |
口臭や歯の美しさに比べて案外意識が及ばないのが口の中にいる相当数の細菌。抜歯後の抗生剤服用を怠ったり、歯周病を放置すると体内で菌が増殖して重い感染症になる恐れがある。しかし一般には理解が乏しく、歯科医師は「正しく認識して治療に臨んでほしい」と呼び掛けている。
「口中は細菌の巣。抜歯を安易に考えず、抗生剤はきちんと服用しないと危険」。熊本市歯科医師会の清村正弥常務理事は力を込める。清村常務理事は本紙くらし面の投稿コーナー「待合室」に掲載された記事を見て、抗生剤服用の意味を認識していない人が多いとあらためて感じたという。
●1回も飲まず
投稿は、抜歯後に化のう止め(抗生剤)と痛み止めが3日分処方されたが、翌日も消毒のため歯科に来るので薬は1日分でいいのではないか、という内容。投稿した70歳の女性によると、院内薬局で薬を手渡されたが、説明はなく結局、痛み止めも抗生剤も1回も飲まなかったという。
しかし、抜歯は神経を取り除く「抜髄」と違い、歯を支える歯槽骨が口腔(こうくう)内にさらされる。口腔内は細菌が非常に多く、歯の表面の歯垢(しこう)には大便と同程度の1グラムあたり1000億個もの細菌がいるという。そのため抜歯時は体内に細菌が侵入するリスクが高まり、抗生剤の服用が不可欠になる。
●バランス調整
抗生剤の服用で血中の細菌の増殖は抑えられるが、一定時間が経つと有効濃度を下回る。そのため指示に従い服用を続ける必要がある。「通常の抜歯は“生傷”状態が3日ほど続く。その間、体の免疫機能のバランスを整えるのが抗生剤。3日分の処方はそのためで、翌日消毒するからと服用しないと命にかかわることもある」と清村常務理事は言う。
清村常務理事がさらに注意を呼び掛けるのが歯周病だ。「歯周病は、いわば歯ぐきの潰瘍(かいよう)状態。無防備で細菌に露出されている」。歯と歯ぐきの間の歯周ポケットの深さが中程度(3〜5ミリ)だと、細菌に露出されている面積の合計は名刺大ほどあるという。この状態のほか、歯石除去など出血を伴う治療をすると血中に細菌がいる菌血症に一時的にかかり、症状が悪化すれば敗血症になる。
清村常務理事によると、抜歯後のケアの不十分さから細菌性心内膜症や脳炎など重い感染症を起こすことがあり、過去に県内でも抜歯後、脳炎で死亡した人もいるという。
●多い院内処方
「待合室」の女性のように、薬の処方の意味を誤認するケースを生んでいる背景として院内処方を指摘する関係者もいる。薬剤は歯科医の処方に基づいて薬剤師が調剤、説明するのが原則。しかし歯科は処方する薬剤が限られていることなどで一般医療ほど医薬分業が進んでおらず、院内処方が大半という。
熊本市内のある薬剤師は「院内処方は薬の説明が不十分になりがち。そのうえ歯科医とのコミュニケーションが不足していると、感染症の危険性に対する認識が育たない」と説明する。
清村常務理事は「心疾患や高血圧、糖尿病など基礎疾患を抱えている人は歯科治療に注意が必要なのは常識だが、患者さんには認識が薄い人もいる。処方する薬剤も同様で、歯科医側の積極的な周知の努力も必要と思う」と話している。
(熊本日日新聞2005年8月3日付朝刊くらし面) |
|
 |
 |
 |
|
|