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胃潰瘍の診療指針 一部の薬の効果を疑問視
 国内の胃潰瘍(かいよう)患者は十二指腸潰瘍患者と合わせて百万人前後と推計されている。この胃潰瘍の診療ガイドラインを、厚生労働省の研究班が三月に初めて策定した。

 この中で胃潰瘍治療薬のうち「防御因子増強薬」は、代表的な三種類の薬を除き「効果に関する根拠がない」とし、他剤との併用も「現時点では勧められない」と指摘。波紋を呼んでいる。

 防御因子増強薬は日本だけで使われているのが多く、国内市場は一千億円以上という。しかし、以前から効果を疑問視する声が少なくなく、ガイドラインは日本の医療の特殊性もあぶり出した。

 「胃潰瘍では従来、さまざまな薬が経験的に使われてきたが、病態と原因に応じた治療をすべきだ。ガイドラインは、これを支援するのが目的」。研究班長で自治医科大(栃木県南河内町)の菅野健太郎・消化器内科教授は力説する。

 日本人の胃潰瘍の原因は、九割がヘリコバクター・ピロリ菌による感染。残りの大部分も、アスピリンなど非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)の副作用という。

 ガイドラインは、国内外の臨床医の論文約八百二十を分析し策定したが、ピロリ除菌が最優先の治療だ。抗生物質二種類と、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の三剤併用を推奨し、成功率は90%程度としている。

 アレルギーなどで除菌治療ができない場合や、NSAIDが原因の胃潰瘍では、第一選択薬はPPI。次いで、別の仕組みで胃酸分泌を抑える「H2受容体拮抗(きっこう)薬」を勧めている。

 一方、国内の処方薬の中心となっている「防御因子増強薬」で効果を認めたのは、スクラルファート(商品名アルサルミンなど)、ミソプロストール(サイトテック)、エンプロスチル(カムリード)の三種類だった。このうちスクラルファートが最も使われている。残る二種類は「プロスタグランジン製剤」とも呼ばれる。NSAIDのかいよう予防に効果が高い半面、子宮収縮作用があるため妊婦には使用出来ない。

 防御因子増強薬は、一〜二剤をPPIまたはH2受容体拮抗薬とともに処方するケースが大半という。しかしガイドラインは「根拠が不十分」とした。

 三十年来、使われている防御因子増強薬も多く、ある消化器内科医は「効果は乏しいが、副作用も少ないので使っていた面も否定出来ない」と明かす。「自分は何のために薬を飲むかと考える人が増えれば、こうした薬は自然に淘汰(とうた)される」。菅野教授の見方だ。

 (熊本日日新聞2003年6月11日付夕刊掲載)
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