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| 糖尿病患者の末梢血管障害 診断基準の適正値割り出す |
熊本市・陣内医師 新たに境界域の設定も提案
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足の動脈硬化が進み、血行不全や歩行障害、疼痛が起きたり、重症化すると壊死や潰瘍が生じるPAD(末梢血管障害)。しかし、日本では2型糖尿病患者のPADの疫学的データが不足している。熊本市の陣内秀昭医師(陣内病院副院長)は、重要な診断基準であるABI(上下肢血圧指数)を、患者約2500人のデータを元に再検討。カットオフ値(病態識別値)の適正値が現在の基準よりも厳しい1.00と割り出し、新たにボーダーライン・エリア(境界域)を設けるよう提案している。2006年12月に南アフリカで開かれた国際糖尿病疫学遺伝学会で発表した。
ABIに基づくPADの診断基準 |
| ・正常 |
0.91〜1.30 |
| ・軽度の狭窄 |
0.70〜0.90 |
| ・中等度の狭窄 |
0.40〜0.69 |
| ・強度の狭窄 |
0.40未満 |
| ・(測定手技上のエラー) |
1.30超 |
「Diabetes Care」誌(第26巻、2003年) |
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陣内医師が提案する
ABIに基づくPADの診断基準 |
| ・正常 |
1.01〜1.30 |
| ・ボーダーライン |
0.91〜1.00 |
| ・軽度の狭窄 |
0.70〜0.90 |
| ・中等度の狭窄 |
0.40〜0.69 |
| ・強度の狭窄 |
0.40未満 |
| ・(測定手技上のエラー) |
1.30超 |
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ABI値(Ankle-Brachial Index)は「足関節部の最高血圧/上腕動脈の最高血圧」で示され、PAD(Peripheral Arterial Disease、下肢閉塞性動脈硬化症)診断の重要な指標の1つ。米国糖尿病学会の診断基準では0.91〜1.30が正常値とされている。
カットオフ値は、正常とみなす範囲を区切る値。カットオフ値の決め方によっては、重大な疾患を見逃したり、健康な人に不必要な再検査を強いる恐れにもつながりかねない。このため、病気の重要性や再検査の負担の大きさなどを考慮して、最適な値を定める必要がある。
◆現行基準、中等度狭窄の半数見逃す
陣内医師は、同院の受診者で臨床データが得られた4436人のうち、非糖尿病者、1型糖尿病、妊娠糖尿病、その他の型の糖尿病を除いた3213人の2型糖尿病からABIを計測できた2491人を対象に分析した。
ABI値は、血管年齢測定器「FormPWV/ABI」を用いて計測した。計器装着後に臥位で数分間安静に保った後、2回連続で計測し、収縮期血圧の差が10mmHg未満であることを確認、平均値を測定値とした。
さらに、下肢動脈狭窄が疑われた男性112人、女性94人の計412の下肢をMRA(MRIを使った血管撮影)で精査した。下肢動脈狭窄度を正常、軽度、中等度、強度、完全閉塞の5段階に分け、ABI値と比較した。
その結果、米国糖尿病学会が提唱する正常と軽度閉塞のカットオフ値0.90では、中等度狭窄を持つ患者の半数以上が見逃されてしまうことが明らかになった。0.90は、強度の狭窄に相当するグレードだった。
陣内医師は、何らかの狭窄病変をもつ人が半数以上存在するABI値として、1.00が適正なカットオフ値と判断。新たにABI値0.91〜1.00の範囲をボーダーライン・エリアとして設け、「1.01以上が正常」と変更することを提案している。陣内医師は「カットオフ値を1.00に変更すれば、2型糖尿病患者のPADを早期発見でき、適切な治療を行えるだろう」としている。
◆動脈硬化の早期発見が重要
研究の背景には、2型糖尿病患者の死因の4割以上を心血管性と脳血管性の疾患が占め、動脈硬化の早期発見が重要なカギを握るという問題意識があった。測定器Formの普及で、患者の体に負担を与えず、迅速なABI測定が可能になっており、動脈硬化の指標や予後因子としてのABIの意義も見直されてきている。
陣内医師は今回の研究に先立って、1977年から99年までに亡くなった2型糖尿病患者461人のカルテを元に詳細な再調査を進めた。死亡時の治療は、12.4%が食事・運動療法、48.8%が高血糖の経口剤療法を受けており、インスリン療法は38.8%だった。つまり、患者の6割はまだインスリン依存ではなかった。全体の平均発症年齢は52.8歳で、発症期間は15.9年。平均寿命は一般的な日本人よりも短かった。
患者の死因の第1位は心血管性の疾患(31.5%)、2位が悪性腫瘍(26.0%)、3位が脳血管性の疾患(11.5%)だった。つまり初期治療を受けている日本人の2型糖尿病患者の43%が心血管性と脳血管性の疾患を合わせた大血管性疾患(心臓病や脳卒中など)で亡くなっていた。心血管病と脳血管病で死亡した患者の年齢分布をみると、大血管性疾患の早期進行が2型糖尿病患者の寿命をより短くしていることが示唆された。
一方、末梢血管の合併症については、男性の40.3%、女性の29.8%は網膜症を全く発症していなかった。死亡時に増殖性の網膜症だった患者は、男性ではわずか14.0%、女性も18.7%に過ぎず、その多くは医療機関を受診する前に発症していた。
こうした結果から、2型糖尿病患者の動脈硬化症の予防と、大血管疾患の進行前に早期に動脈硬化を発見する重要性が示された。陣内医師は、2型糖尿病患者の初期治療は血管、特に動脈硬化も詳細に評価しながら行われるべきだとしている。
患者の血管検査では、ABI値が1.10を超えていれば、下肢の狭窄変化はほとんど見られず、多くの動脈硬化性の変化やPADの悪化、ABI値の低下は傾向が似通っていた。しかし、ABI値が0.90〜1.00以下の患者でも狭窄の変化がたびたび見つかっている。実際、今回の患者約2500人の分析がこれらを裏付ける結果となった。
陣内医師の研究は、06年夏のアメリカ糖尿病学会でも口演発表、秋の日本臨床内科医学会では優秀演題として学会長賞を受けている。(高本文明)
(くまにちコム「健康・医療」2007年1月29日付) |
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