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糖尿病の患者教育 医療者がスクラム
「ネットワークKUMAMOTO」 発足1年半
糖尿病患者が増え続けている。自覚症状に乏しく、進行すれば網膜症、腎症、神経障害など深刻な合併症にかかりやすい。治療に大きなカギを握るのが、患者自身の血糖コントロールやセルフケアだ。県内では、患者への教育指導を、看護師、薬剤師、管理栄養士らコメディカルが協力し合って進めようと、「糖尿病教育ネットワークKUMAMOTO」が発足して1年半。実践・応用を重視した研修会などを通じて、スキルアップや情報交換に意欲的に取り組んでいる。(高本文明)
血糖値の説明の仕方について、患者役と医療者役のロールプレイを体験する参加者=熊本市の県立劇場地下大会議室
患者役「血糖値の動きについて教えてください」
医療者役「食事を取ると、(糖質や炭水化物が)ブドウ糖に変わって、ブドウ糖が血液中に出て、筋肉やほかの細胞に利用されることで一時的に血糖値は下がっていきます…」
「高血糖と低血糖 どちらが怖い?」をテーマに、熊本市の県立劇場地下大会議室で開かれた第5回研修会。90人の参加者が3人1組になり、患者役、医療者役、聞き手を模擬体験するロールプレイを行った。アドバイザーの上原昌哉医師(熊本市・くまもと成仁病院院長)、小山研一医師(同・小山内科クリニック院長)が「その患者さんしか分からない独特の低血糖の症状があります。それを上手に引きだして、患者を支えてあげることが大事です」などと解説した。
同ネットワークは2005年7月、糖尿病教育の実践的な専門家の養成や研究活動を行う日本糖尿病教育・看護学会の推進組織として発足した。治療の継続には、職種を問わない交流の場を提供し、他職種・他施設間のネットワークづくりが必要という問題意識が背景にある。県内の7病院の看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床検査技師ら10人が世話人となり運営。世話人全員が専門の認定機構による日本糖尿病療養指導士(CDE)の資格を持つ。主な活動は、テーマに応じたロールプレイやグループディスカッション、実習、学術講演会、糖尿病関連研修会の情報提供、他の職種・施設との情報交換や交流など。
「糖尿病教育は患者に知識や情報を提供するだけではなく、患者の価値観や日常の生活習慣に配慮して行う必要があります。ネットワークKUMAMOTOはさまざまな職種が集い、チーム医療の在り方や実践方法を学ぶ場。CDEに限らず、糖尿病教育に携わるさまざまな医療スタッフに参加してもらい、連携を深めていきたい」と代表世話人の川口はるみさん(熊本市・陣内病院外来師長)。
●実践・応用を重視 ロールプレイで役割体験
フットケアをテーマにした第4回研修では、付け爪を使って爪の切り方を学んだ=熊本市の県立劇場地下大会議室
これまで5回の研修会を開き、延べ470人が参加した。テーマは、血糖の自己測定実習や初診時の問診テクニック、病態説明と治療への動機付け、肥満と糖尿病、合併症の神経障害に伴う足病変とフットケアなど、どれも重要なものばかり。医療者として必須の知識を盛り込み、病態を読む「糖尿病ウルトラクイズ」、3カ月間にわたる患者のダイエット大作戦、“やせられない言い訳”のロールプレイ、座ったままでできる有酸素運動、付け爪を使った爪切り実習など、ユニークで実践的なプログラムがふんだんに盛り込まれている。
特に、3人(または6人)1組で患者役、医療者役を体験するロールプレイを重視しているのが特徴だ。患者に対する説明や患者自身に治療内容を理解してもらうことの難しさ、医療者側の思い込みなどに気づいてもらうためでもある。また、第5回研修では、初めて「1型」糖尿病患者を迎えたディスカッションも行い、患者の生の声に耳を傾けた。
研修内容は「すべてプラスになる内容」と参加者の反響は大きい。アンケート結果をみると、
「患者へのアプローチ方法をあらためて見直す機会になった」
「治療の動機づけには、精神面を支えるのが一番大切だと分かった」
「ふだん糖尿病教育にじっくりと時間をかけることができず、悩むこともあるが、チームで教育するメリットをいろいろと見つけることができた」
「SMBG(血糖自己測定)ノートを使ってみて、患者の気持ちを知ることができた」
「さまざまな職種の違った視点の意見を聞くことができて、参考になった」−。患者教育・指導の難しさをあらためて実感した参加者の思いがうかがえる。
研修会には普段着で参加してもらうのも“ルール”。軽妙な司会で進行し、親しみやすさを心がけたスタイルとあって、「肩の凝らない研修で楽しかった」「リラックスして自由に勉強できた」と評判は上々だ。
「どのプログラムも、すぐ現場で活用できる実践能力を身につけることを目的に構成しています。参加者の職種や施設にも広がりがみられ、うれしい」と川口さんは手ごたえを語る。
●ホームページ開設 ブログで意見交換も
一方、現場で直面する切実な悩みも参加者から寄せられている。
医療者については、
「他職種とのかかわり方が難しい」
「マンパワーが不足している」
「医師が積極的でなく、コメディカル教育がうまくいっていない」
「チーム医療が大切だと分かってはいるが、どうしていいか分からない」
「一人ひとりに教育指導の時間が取れない」
患者との接し方では、
「40、50歳の働き盛りで、境界域の人に糖尿病教室への参加をどう促すかなど、教え方に悩んでいる」
「しばらくはその気になっても、継続的に食事・運動ができない患者が多い」といった声もある。
こうした思いを受け止め、解決につなげる一助にと、今年6月にはホームページを開設。糖尿病関連の研修・講演会情報を提供するほか、意見交換用のブログも設けている。
アドバイザーの1人、陣内秀昭・陣内病院副院長は「糖尿病には自覚症状がほとんどなく、治療の中断や放置が起きやすい。それを未然に防ぐためには、医療スタッフの目に見えない努力やスキルが不可欠。ネットワークが和気あいあいとした雰囲気の中で、自然に取り組めるような楽しい会として続いていくよう願っています」と期待を寄せる。
代表世話人の川口さんは「今後も患者と医療者の悩みを受け止め、教育指導のレベル向上と患者のQOL維持を目標に、実習を中心とした研修会を開いていく。参加者には療養指導で生じる悩みを解決する糸口にしてほしい。チーム医療の在り方や地域の中で患者がどう治療を継続していくかなどにも取り組みたい」と話している。
糖尿病教育ネットワークKUMAMOTOのホームページ
・パソコン版
http://www1.bbiq.jp/dm-net
・ブログ
http://dmnet.blog68.fc2.com/
・携帯版
http://k2.fc2.com/cgi-bin/hp.cgi/dm-net/
≪事務局≫ 熊本市九品寺6-2-3、陣内病院
TEL 096(363)0011、メール dm-net2005@ymt.bbiq.jp
※次回の研修会(第6回)は、07年3月21日午前9時45分〜午後1時、熊本市手取本町のくまもと県民交流館パレア大ホールで開く。テーマは「チーム医療と地域連携のあり方を考える!」。参加費500円。共催・三和化学研究所。
(くまにちコム「健康・医療」2006年12月19日付)
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