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末期がんの痛み、心労除く 緩和ケア
県内がん死者の1割看取る 人材育成、体制整備が急務 病棟配置に地域格差も
 主に末期のがん患者の疼痛(とうつう)や心労を取り除く緩和ケア。県内の専門病棟などでは、年間のがん死亡者の約一割を看取り、その役割は大きい。だが、大半の患者は一般病院で最期を迎えている。治療の初期からの緩和ケアが叫ばれる中、緩和ケアに対応できる人材の育成や関係機関の連携が急務になっている。

発症初期で皮膚表面
がんの痛みを和らげるため、モルヒネなどの皮下注射を受ける患者=合志市の西合志病院・緩和ケア病棟
発症初期で皮膚表面
  合志市御代志の西合志病院。緩和ケア病棟三階のデイルームで、ボランティアが患者に茶菓子をもてなし、ハーモニカで童謡などを披露した。

 直腸がんで入院中の五十歳代の女性は、がんが全身に転移。「ひざから上がどうしようもなく痛い。でも、薬を使うといつの間にか痛みが消えている。ボランティアの方が来てくれるのがいつも楽しみです」

 コントロール可能

 がんの痛みは、一般に進行がんの五割、末期がんの七割程度の患者に起こる。緩和ケアでは、主にモルヒネなどの医療用麻薬(オピオイド)、神経の近くに麻酔薬を注射する「神経ブロック」などで痛みを取り除く。抗がん剤の副作用の緩和や酸素吸入などにも対応。患者や家族の不安を軽くするカウンセリングなど、精神面でも支援する。

 同病院副院長の小林秀正医師は「痛みが起きても痛みの九割はコントロールできる。医療用麻薬も適切に使えば依存性はなく心配ない」と話す。

 現在6カ所で対応

 県内で専門の緩和ケアができる医療機関は現在六カ所。緩和ケア病棟は、主に末期がん患者を受け入れ、緩和ケア担当の医師を置くなどの条件を満たす施設で、現在は五病院が計八十五床を持つ。二〇〇五年には、自宅での最期を願う在宅患者を専門とした診療所、熊本ホームケアクリニック(熊本市)も開院した。

 これら六カ所が看取った患者は二〇〇〇年は二百一人だったが、〇六年には五百七十一人に増えた。県内のがん死亡者は年間約五千人で、緩和ケアを受けながら亡くなった人は全体の約一割にあたる。

 小林医師は「緩和ケア病棟などが対応する割合は全国平均で5%程度で、熊本は確かに高い。しかし、残る九割は多くの医療機関が一般病棟で対応している。熊本大病院のように緩和ケアに力を入れているところもあるが、すべての医療機関で十分な症状緩和ができているか、ケアの内容には差があると思う」と指摘する。

 一方、緩和ケア病棟の配置には地域格差もある。熊本市には三カ所五十二床あり、人口百万人に換算すると七十八床。全国平均(二十六床)の三倍になり、同市は恵まれた地域といえる。だが、熊本都市圏以外では人吉市にしかない。

 同クリニックの井田栄一院長は「一般病院で緩和ケアの質を上げるのが急務。そのためには緩和ケアに詳しい医師が所属を超えて出向くことも必要。人材を活用するためのネットワークづくりが求められる」と話す。

 年内にも現状調査

 県内のがん医療の推進体制を検討する県がん診療連携協議会には緩和ケア部会も設けられており、県が今後策定する「県がん対策推進計画」の具体策を検討していく。

 しかし、人材育成や関係機関との連携など検討課題は多い。同部会の部会長を務める小林医師は「緩和ケアには専門医制度はなく、対応できる医療者の実数などもよく分かっていない」と明かす。神経ブロックは麻酔科医が行うため、協力関係づくりが必要。また、高い専門性を持つホスピスケア認定看護師は県内に四人、がん性疼痛管理認定看護師はわずか一人しかいない。

 小林医師は「年内にも医療機関にアンケート調査を行い現状を把握し、体制づくりに生かす。医療用麻薬に対する誤解も払拭(ふっしょく)し、安心して緩和ケアを受けられるようにしたい」と話している。(高本文明)

 ○用語=がん対策推進基本計画 4月施行のがん対策基本法に基づき策定され、今後5年間のがん対策の基本的な方向を定める。緩和ケアについては、「患者、家族の苦痛軽減と生活の質の維持向上」を掲げ、治療初期からの緩和ケアが重点項目の1つ。個別の数値目標では、10年以内にがん診療に携わる全医師が緩和ケアの基本知識を習得することを求めている。都道府県は来年度までに独自の計画をまとめる。

  (熊本日日新聞2007年7月2日付朝刊)

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