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在宅ホスピス一般病棟…選べる生活の場 患者の希望に柔軟対応
オーストラリア・ビクトリア州視察報告(井田栄一医師)
 自分らしい最期を迎えたいと願う末期がんなどの患者を受け入れるホスピス(緩和ケア病棟)。県内の5施設でつくる熊本ホスピス緩和ケア協会は「在宅と病棟での一貫したホスピスケア」を模索している。在宅ホスピスの先進地、オーストラリア・ビクトリア州を視察した井田栄一同協会代表(48)に報告してもらった。

井田栄一医師
 ビクトリア州は、この10年間で在宅ホスピスケアが発展した。「在宅」「ホスピス病棟」「一般病棟」のどこでも患者・家族が同質の緩和ケアを利用できるようにする「ケアの三角形」という理念が特徴。ホスピス担当の医師は、3カ所すべてで診療に携わる。医師1人が年間四、五百人にかかわるという。

 オーストラリアでも「最期まで自宅にいたいが、在宅ケアで家族に迷惑をかけたくない」と思う患者が多い。「ケアの三角形」によって“生活の場所”を患者それぞれの希望に応じて選べる。スタッフも在宅で看取らなくてはと思い込まず、互いに柔軟に選べるようになったのがメリット。

 県内では、ホスピスに入院する患者は、病院からが8割、自宅からが2割。県内の各ホスピスは、自前でホスピス病棟と在宅ホスピスを受け持っているが、患者の受け入れは“待ちの姿勢”。ホスピスの担当医が病院に直接出向いて診察するわけではなく、病院との診療の連携が十分ではないのが実情。病院の緩和ケアチームも全国で30程度しかできていない。チームが増えれば、連携を強めることもできるだろう。

 オーストラリアのホスピスは、人口100万人に50床を目標として整備された。ケアの対象は1995年は、がん患者が95%だったが、現在はがん以外が27%に増加。人口30万人の同州フランクストンでは、ホスピス病棟で亡くなる患者が5割、病院が3割、在宅が2割程度という。死の直前まで家で過ごす割合は高く、ホスピスの入院期間は短い。4人のうち1人は3日以内の入院だった。

 モナシュ大学看護学部緩和ケア科のスーザン・リー講師は「今は必要な人すべてが緩和ケアを利用できるようにすることが目標」。地域のホスピスケアの充実を啓発することが重要と強調する。

 在宅ホスピスの訪問看護師の育成や病院の緩和ケアチームとの連携に取り組んできたセバササン・マノ医師は「『ケアの三角形』は、各頂点を担当する医療者間の信頼関係が核。綿密なコミュニケーションが必要となる」と指摘した。

 オーストラリアでは医療の新しい挑戦が始まっているという。「病院から地域へ出ていく医療」を目標に、急性期での治療は短期間で終え、患者が自宅に戻った後、かかりつけ医が訪問して診療。在宅で病気を診るシステムの構築に力を注いでいる。

 病院の平均在院日数は約20日間の日本に対して、4日間。ベッド不足とも思われるが、少ないだけに自分自身で健康を管理する必要があり、医療の意思決定にもっと参加したいと考える市民も多いそうだ。

 県内のホスピス(緩和ケア病棟)は、5施設(78床)。熊本市には、3施設(52床)あり、既にオーストラリア以上の比率を達成している。

 視察を通じて、私たち自らが情報を地域に発信することが必要と考え、熊本ホスピス緩和ケア協会では、来年度からホスピスケアの説明会を開くことにした。在宅ホスピスケアの定着は「自宅療養が安心してできる地域づくり」の延長線上にあると感じている。(イエズスの聖心病院みこころホスピス医師、熊本ホスピス緩和ケア協会代表)

 (熊本日日新聞2004年11月30日付朝刊くらし面)

 ※井田栄一医師は現在、熊本市神水の熊本ホームケアクリニック院長、熊本緩和ケア情報センター代表。

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