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肺がんの「分子標的治療薬」 副作用少なく効果持続
 がんの増殖メカニズムに照準を定めて狙い撃ちする「分子標的治療薬」が続々と開発され、“難治がん”の一つである肺がんの治療に光が差し込んできた。がんの悪性化と転移の阻止が主な目標だが、従来の抗がん剤と違って副作用が少なく、効果が長期間持続する。日本でも英国系のアストラゼネカ社が経口薬の輸入承認を厚生労働省に申請中で、ここ一年前後に発売される可能性が出てきた。

 悪性化を阻止

 分子生物学の急速な進歩で、がんの増殖メカニズムが遺伝子レベルで分かってきた。これを利用して、がんの悪性化に関連する増殖因子や血管新生因子、転移関連因子などのミクロな分子に的を絞り、その働きを止めようというのが分子標的治療薬だ。

 世界中で多くの分子標的治療薬が開発され、臨床治験も進んで今後のがん治療への適応が待たれている。

 中でも期待が高いのが肺がん。日本でも早い段階から、がんが縮小するなどの効果がみられていた。肺がんは、日本では一九九八年にがんの死亡者数でトップになり、死亡者は年間約五万二千人。五年生存率は15%を下回り、治療が非常に難しい。

 2年前から治験

 近畿大医学部(大阪狭山市)第四内科の福岡正博教授は「肺がんは見つけにくく、見つかったときには約80%が転移していて手術ができない」と話す。肺がんの治療は、主に抗がん剤が使われているが、大部分の肺がんは抗がん剤が効きにくく、生存期間の延長はなかなか望めない。抗がん剤が効いても、がんと一緒に体の正常細胞も壊してしまう。また、いったん抗がん剤を使った後は、ほとんど何も効かなくなるという。

 こんな手だてのない患者には、アストラゼネカ社の分子標的治療薬「ZD1839」(商品名イレッサ)を使って二年前から臨床治験を続けている。一日一回投与の経口薬で、偏平上皮がん、腺がんといった非小細胞肺がんで過剰に発現する「上皮細胞増殖因子」の働きを阻害する作用を持つ。

 予想上回る効果

 これまでの日欧豪の共同治験では、被験者二百九人の約20%に「効果」(がんが消失または50%以上の縮小が四週間以上続く)がみられた。福岡教授は「薬が効く期間も長い。“効果”と、がんがそのまま大きくならない“不変”を合わせると60%になる」と話す。理論的には「がんの増殖を止める」はずだった薬が、がん細胞の消失や縮小など、予想を上回る効果をあげている。自覚症状の改善という点では、早い人で投与開始から一週間で痛みが取れたり、せきが止まったという。

 「治験は末期患者が対象で、もっと早期の患者に投与すれば、消失例も増えるのではないか。抗がん剤や手術と組み合わせることもできる。“夢の薬”ではないが、治癒率を上げる可能性は十分」と福岡教授。「今の状況は五十年前に抗がん剤が開発された時と似ている。分子標的治療薬の出現で、がん治療に新たな大きな戦略が加わった。画期的なこと」とみている。

  (熊本日日新聞2002年3月26日付夕刊)

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