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くも膜下オピオイド投与法 がんの痛み確実に緩和
 モルヒネなど医療用麻薬(オピオイド)を使っても、激しい痛みが取れないがん患者が5%ほどいる。大分大付属病院(由布市)の服部政治・緩和ケア支援チームリーダー(麻酔科助手)が、皮下埋め込み型ポートを使ったくも膜下オピオイド投与法を編み出し、この難治性の痛みを解消している。

 服部助手は1999年夏から一年間、米ニューヨークのスローン・ケタリング・記念がんセンターに留学した。その際、オピオイド入りの小型ポンプを腹の皮下に埋め込み、脊髄くも膜下に挿入したカテーテルでオピオイドを持続投与し、がん患者の激痛を和らげる光景を目の当たりにした。痛みに耐えられず叫びながらストレッチャーで運ばれてきた患者が、処置された後は歩いて帰宅するという。

 埋め込み型の小型ポンプを使ったくも膜下オピオイド投与は、欧米のみならず、アジアでも韓国やインド、シンガポールなどで普及している。しかし日本では類似のポンプが、がんの痛み止め薬剤を入れる目的では厚労省の承認を得ていないため、使えない。

 このため服部助手は、注射針の刺し口となるポートを胸の皮下に埋め込み、皮膚の上から注射針を刺して携帯型のポンプからオピオイドを投与する方法を考案した。くも膜下に挿入したカテーテルとポートは皮下でつながれており、感染する可能性は低い。ポンプは首から下げられるほどのサイズで自宅でも使える。ポートから針を抜いてポンプを外せば、風呂に入ることもできる。

 この方法を導入して1年になるが、18日現在、患者7人に試みた。オピオイドの経口剤や注射液では痛みが解消せず、体も動かせないほど痛みがひどかった。その人たちが、くも膜下にカテーテルを挿入しオピオイドを投与し始めた途端、痛みが和らぐ。

 がんの症状や個人差もあるが、ほとんどの患者は退院して自宅近くの病院で治療を受け、死亡する直前までほとんど痛みのない状態で家族と過ごせた。

 オピオイドの経口剤や注射液は、吐き気、眠気、便秘といった副作用があり、投与量が増えるほど、目立つようになる。ところが、くも膜下投与は、中枢神経の近くに直接入れるため、経口剤や注射液に比べ投与量も格段に少なく、副作用もほとんどない。服部助手は「個人差もあるが、例えば、オピオイドを服用で300ミリリットル使うとするなら、くも膜下投与は100分の1の3ミリリットルで済む」と話す。

 さらに医療費もかからない。服部助手によると、小型ポンプを使うと200万円前後だが、ポートは15万円ほど。しかも小型ポンプは公的医療保険の適用外だが、ポートは適用されるため、その差は一段と開く。

 海外では、埋め込み型の小型ポンプを使った痛み止めが主流になっているが、服部助手の調べでは、日本ではポート方式の例は散見されるものの、体系立てて実績を重ねているのは大分大付属病院だけ。服部助手は訴える。「くも膜下へのオピオイド直接投与は、確実に痛みが取れる。その効果を分かってもらえるなら、取り組む医師も増える」

 服部助手は8月末に同病院を退職。10月から国立がんセンター中央病院(東京都中央区)に勤める。

  (熊本日日新聞2006年8月23日付「夕刊メディカル」)

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