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| 子宮頸がん予防ワクチン しのぎ削る米英の大手製薬会社 |
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子宮頸(けい)がん予防ワクチンの開発、販売をめぐって、大手製薬会社の米メルク社と英グラクソ・スミスクライン社(GSK)が、世界を舞台にしのぎを削っている。メルク社が開発した「ガーダシル」は既にメキシコ、米国、オーストラリア、カナダが製造販売を承認。同社は「ガーダシルは世界初、唯一の子宮頸がんワクチン」と打ち上げている。一方、GSKも強力アジュバント(免疫増強剤)を組み込んだ「サーバリックス」を3月にEUで承認申請、12月には米国でも承認申請して、メルク社を追撃する。
◆性交渉の低年齢化で30代患者が増加
女性の主要部位のがん死亡数と割合
(2003年、人口動態統計) |
順位 |
部 位 |
罹患数 |
% |
1 |
胃 |
17393 |
14.2 |
2 |
肺 |
15086 |
12.3 |
3 |
結腸 |
12982 |
10.6 |
4 |
肝 |
10713 |
8.7 |
5 |
すい臓 |
9868 |
8.0 |
6 |
乳房 |
9806 |
8.0 |
7 |
胆道 |
8627 |
7.0 |
8 |
子宮 |
5302 |
4.3 |
9 |
直腸 |
4901 |
4.0 |
10 |
卵巣 |
4231 |
3.5 |
11 |
リンパ腫 |
3619 |
3.0 |
12 |
白血病 |
2930 |
2.4 |
13 |
その他 |
17173 |
14.0 |
合 計 |
122631 |
100.0 |
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に起因する感染症。母子感染もあるが、ほとんどは性交渉から。世界では年間約50万人(うち日本約7000人)が発症し、年間約24万人(うち日本約2400人)が死亡している。性交渉の低年齢化に伴って30代の患者が増加しており、10〜20代のウイルス感染者が増えているとみられる。感染から発症まではおおむね10年とされる。
ただHPVの感染者が、全員子宮頸がんになるわけではない。90%の人は感染しても発症しないという。発症は100を超えるとされているウイルスのタイプに左右される。原因になるタイプは16型と18型の2タイプで70%を占める。日本人では16型と18型で60%とされる。
◆前がん症状を100%予防
メルク社の「ガーダシル」は、ウイルスタイプ6型、11型、16型、18型を対象とする4価ワクチン。16型と18型は子宮頸がんにとどまらず、外陰部や膣の前がん症状も引き起こす。また6型と11型は、子宮頸がんの原因ウイルスではなく、性器にできる「イボ」の尖圭コンジローマの主因になる。米国でのガーダシル接種の適応年齢は9〜26歳の女性。接種法は初回、2カ月目、6カ月目の3回接種。筋肉注射する。オーストラリアでは男子(9〜15歳)も接種でき、より厳重に警戒している。16型と18型のウイルスは、男性は感染する可能性はあっても発症する危険性はないが、性器イボの原因になる6型と11型のウイルスは感染、発症する可能性があるため、男性の“メリット”は小さくない。
FDA(米国食品医薬品局)が「ガーダシル」を承認する際に審査したデータによると、臨床試験は33カ国の男女27000人以上を対象に10年間実施された。
その結果、16型と18型に未感染で3回接種した女性(16〜26歳)で、子宮頸部(けいぶ)、膣、外陰部の前がん症状を100%予防。6、11、16、18型に未感染で3回接種した女性(16〜26歳)で、子宮頸部病変を95・2%、性器イボ(尖圭コンジローマ)などを99・1%予防したという。
◆強力なアジュバント
対する英GSK。16型と18型の感染予防を目的に「サーバリックス」を開発。今年3月、臨床試験の結果から、「この2タイプのウイルスによる持続的感染に対する100%の予防効果と前がん病変に対する予防効果が認められた初のワクチン」と発表、欧州医薬品審査庁(EMEA)に製造販売の承認を申請した。その後、オーストラリアやラテンアメリカなどでも申請し、06年末までにFDAに申請する計画を立てている。
同社の“売り”は、独自開発した強力なアジュバント(免疫増強剤)AS04。雑誌『ワクチン』に発表されたデータによると、「サーバリックス」は、アルミニウム塩をアジュバントに使っている従来のワクチンに比べ、HPVの16型と18型に対する抗体価を、長くかつ高く維持した。16型と18型による感染が原因の前がん病変に対し4年以上も100%の予防効果が認められたという。
このAS04は、変異型鳥インフルエンザワクチンの開発にも使われており、GSKのワクチン開発では切り札的な存在だ。
予防ワクチン接種後は、免疫記憶B細胞が抗体価を維持するのに不可欠とされる。「サーバリックス」接種後は、16型と18型に特異的な免疫記憶B細胞の出現頻度が一貫して高かったという。AS04は、子宮頸がんの原因になる45型と31型タイプのウイルスにも予防効果があるため、16型、18型を合わせると子宮頸がん原因ウイルスの80%をカバーできるという。
◆日本では臨床試験開始
子宮頸がん患者が乳がん患者に次いで多い日本では、GSKの立ち上がりがやや早かった。同社日本法人(東京都渋谷区)は4月、20〜25歳の健康な女性を対象に臨床試験を開始した。参加者は事前登録制度を使って募っており、電子メールでも手軽にアクセスできる。気になるワクチンの発売は「一般論で申し上げると、2〜3年後になるでしょう」(広報室)。
メルク社も、日本法人の子会社「万有製薬」(東京都千代田区)が7月、18〜26歳の健康な女性1000人を対象に臨床試験を始めた。GSKとは異なり、臨床試験の参加者募集は医療施設に一任している。「臨床試験2年、データ解析半年、承認審査1年。一般的には発売まで3年以上かかります。ただ海外の臨床試験データを使ってもいいし、他国の承認状況にもよるでしょうし…。正直、分かりません」。万有製薬も明確な見通しは明かさない。
しかし両社とも欧米での争いとは大きな違いがある。接種の対象年齢だ。欧米では6歳以上なのに、日本では18歳以上または20歳以上にしている。「性交渉の年齢が低下していると言っても、6歳では社会の抵抗が強い。自分の娘が、小学校に入る前から子宮頸がんの予防ワクチン打つかと思うと…」。高校生と中学生の娘2人持つ勤務医は複雑な表情だ。
しかも予防ワクチンは、最初に開発したメルク社の臨床試験開始から5年目に入った段階。6年目以降、ウイルスに対する防御レベルを維持するため、追加接種が必要かどうか不明だ。つまり有効期間がまだ定かになっていない。(南里秀之)
(くまにちコム「健康・医療」2006年8月23日付) |
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