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直腸がん手術でも…人工肛門が不要に

 肛門(こうもん)近くのがん手術で人工肛門(ストーマ)を造らない技術が進んでいる。肛門括約筋を残して排便機能を自立させる手術法で、患者の術後のQOL(生活の質)も向上しているようだ。国内では5年ほど前から積極的に行われるようになり、好成績を挙げる医療機関も増えている。

山田一隆氏
山田一隆
高野病院院長
 直腸の中でも骨盤内にできたがんの切除はかつて難手術だった。骨盤内にある性機能や排尿機能をつかさどる自律神経が除去される場合も少なくなかった。それが吻合(ふんごう)機械の進歩もあり、ストーマを造らない技術が次第に向上していった。10年前にオーストリアの医師が歯状線(下部直腸と肛門管の境界)を超えた手術に成功した後は、日本でも同様の手術が一般化しつつある。財団法人癌(がん)研究会によると、直腸がん手術でストーマを造る割合は一時的なものも含め現在20%以下に減っている。

 この術法を可能にする前提は、切除範囲を内肛門括約筋までにとどめ、排便を意志で調節する外肛門括約筋を温存することだ。従来、不随意筋の内肛門括約筋を切除すると排便機能を失うとされていたが、県内で積極的に同手術を行っている高野病院(熊本市帯山)の山田一隆院長は「一部に不随意機能のある外肛門括約筋を利用する」と説明する。

(下部直腸と肛門管の断面図)
 山田院長は国内でまだ数が少ないという肛門間際の手術にも取り組んでいる。手術ではS状結腸をJ型に縫合して便を貯留する袋を造り、これを肛門と結合する。そうすることで便の圧力を和らげ、術後の排便機能を高められるという。

 ただ、術後は排便機能の回復訓練が必要。残った括約筋を鍛えたり神経の動きをイメージする心理療法を組み合わせた訓練に3カ月から1年取り組む。確実に機能を回復させるために、その間、一時的に回腸からストーマを造る医師もいる。

 山田院長が2001年以降に執刀した歯状線より肛門側を切除した患者のうち、術後1年以上の27人の排便機能を5段階評価した結果によると、最も良好な「全く問題ない」が13人、「ガスと便の区別がつきにくい」8人、「たまに便漏れがある」5人、「毎日便漏れある」1人―だった。一種の脱肛を起こす例もあるが、術後に永久ストーマに切り替えた患者はいないという。

 山田院長は「再発の可能性の高い組織のがんや周囲に広く浸潤の進んだものを除き、がんの大きさがおおむね3センチ以下だと永久ストーマは不要と考える。術後の患者さんのQOLを高められるのは何より。根治性も高く、安全性は確立されつつある」と自信を示す。

 課題は内、外の各肛門括約筋を正確に見分けられるなど高度の技術を要すること。そのため山田院長が世話人を務める大腸癌研究会内では05年1月、プロジェクト班を立ち上げ標準手術化に向けた研究を進めている。山田院長は「患者さんが術後有意義に社会生活できるよう、多くの医師が技術を習得できる教育プログラムを充実させていきたい」と話している。(岡本幸浩)

  (熊本日日新聞2005年3月23日付朝刊くらし面)

 
 
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