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若年性認知症の今 −困難と不安の中で―

 (下)支援の輪づくり 同じ立場の人と話したい
若年性認知症の人を襲う孤独と不安。本人と家族の支援はこれからだ(植山茂)
 今月八日、熊本市本荘の熊本大医学部付属病院・山崎記念会館。午後五時を過ぎ周囲が暗くなり始めたころ、約三時間にわたった研修会「若年性認知症の支援を考える」が、予定時間を超えようやく終了した。医師ら五十人を超えた参加者の中には、県内在住で若年性アルツハイマー病と診断された芙美子さん=五十代、仮名=と、夫の孝男さん=同=の姿も。「大変ためになりました」。孝男さんがこう言うと、傍らで芙美子さんも笑顔でうなずいた。

     
   
 研修会は、同大医学部神経精神科主催。同科の池田学教授は、若年性認知症の疫学調査に関する厚生労働省の研究班の一人だ。患者本人をはじめ家族に深刻な影響を及ぼす若年性認知症への支援の在り方を議論しようと、初めて研修会を企画した。中でも注目を集めたのが「認知症の人と家族の会」の報告だった。

 同会は一九八〇年に京都市で発足。九八年に県支部が結成され、現在の会員数は百三十人。うち若年性認知症の患者と家族は十一人いる。

 同会は今年二月、初めて若年性認知症の家族が集まる「つどい」を開催した。これまでに七回あり、芙美子さん、孝男さん夫婦も五月から毎回参加している。

 活動内容を報告した県支部事務局の冨岡大高さんは、「つどい」での参加者の声を「病気」「介護」「サービス・制度」など七項目に分けて紹介。特に経済的問題については、「病気になって会社から退職を迫られた」「自宅で介護したいが、自分が働かないことには生活できない」など、若年期特有の本人や家族の問題を訴えた。

 「本人には思いを語れる場や居場所づくりが必要。家族には家族同士の支え合いや経済的支援が求められています」

     

   かつて芙美子さんは孝男さんにこう語ったことがある。「朝がくるのが怖い。一日どうやって過ごせばいいの。一人で居ると不安」。芙美子さんの場合、孝男さんが働いている昼間は親せきや友人が芙美子さん宅を訪れ、できるだけ一人にならないようにしている。しかし、支える人が近くにいない患者は、入院せざるをえない場合もある。

 「もの忘れ外来」に年間約二百人の新規患者が訪れる独立行政法人国立病院機構菊池病院(合志市)。木村武実臨床研究部長は「若年性認知症の患者は、はいかいの行動範囲も広く、問題行動が起きてくると自宅介護が難しくなり、入院となるケースは多い」と説明する。

 「本人の特性に応じ個別に対応する施設があればいいが現状は少ない。症状が安定して退院の時期になっても、家族が代わりに働かざるをえなくなり、自宅介護ができない場合もある。本人が行き先に困らないよう、受け入れ施設を増やすことが重要だ」

 若年性認知症の患者を受け入れた施設は県内にもある。複数のケースの経験がある通所施設の担当者は「お年寄りと同じメニューで参加してもらうことは無理がある」と断言する。「例えばスポーツが好きな人であれば、スポーツをしに来るとか、その人の性格やこれまでの生き方に沿った形のケアが若年性の患者ではより求められる。人員配置やケアの質の向上のためにも、若年性認知症に特化した制度の新設が必要ではないか」

     

 山崎記念会館であった研修会では、居場所づくりのほか、行政の相談窓口、診断・治療の核となるセンター機能を持った医療機関の必要性、家族会に患者や家族を紹介するルートづくりなどについても今後の課題とされた。医療だけでなく介護など福祉を含めた支援の在り方を探る研修会は、今後の支援の輪の広がりを期待させた。

 終了後、芙美子さんは笑顔でこうつぶやいた。「本当に気軽に立ち寄れる場所があればいいのに。同じ立場の人と話し合いたいな」(田端美華)

  (熊本日日新聞2007年12月19日付朝刊)
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