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機能損ねず悪性脳腫瘍摘出 術中モニタリング 熊大付属病院導入
画像見ながら的確に 治療成績全国トップクラス
 悪性脳腫瘍(しゅよう)の手術で、言葉や手足の機能を損ねずに腫瘍をできるだけ多く取り除く「術中モニタリング」が注目されている。ハイテク機器を使って、腫瘍の位置を正確に把握しながら摘出できるため、生存率の向上や後遺症の軽減が期待できる。県内では熊本大付属病院(熊本市本荘)が導入し、全国トップクラスの治療成績を挙げている。

ニューロナビゲーションシステムを使った脳腫瘍の手術。右端がモニターで、執刀医の上にある赤外線カメラで脳の位置を確認している(熊本大付属病院脳神経外科提供)
 ■脳組織のナビ

 同病院の脳腫瘍手術。執刀医の横にあるモニターに患者の脳の断面図が写し出されている。補助役の医師がポインターの先端で脳の表面に軽く触れると、断面図の一点に十字のマークが表示された。脳の位置情報を伝えるニューロナビゲーションシステムだ。事前に磁気共鳴画像装置(MRI)で脳の地図を描き、専用の観測装置で手術中の患者の脳と地図を同調させる。車のナビのように、執刀医が切除している位置を地図上にリアルタイムで表示できる。

 脳神経外科教授を兼務する倉津純一院長は「これまでは手術前の画像を基に、腫瘍の位置を推定するしかなかった。今は画像上の表示と照らし合わせながら手術するので、より的確な治療が可能になった」と話す。

 悪性脳腫瘍は神経膠腫(こうしゅ)と呼ばれ、周辺の組織にしみ込むように広がる。県内では毎年、六十人前後が発症していると推定される。正常組織との境目が見分けにくく、脳腫瘍を完全に取り除くことは難しい。手術から三年後の患者生存率は全国平均で40%前後。しみ込み度合いが大きい神経膠芽腫(こうがしゅ)だと、生存率は10%しかない。

 同病院は一九九八年にニューロナビを導入。さらに腫瘍の悪性度が分かる陽電子放射断層撮影(PET)や、腫瘍を光らせて肉眼でも見分けやすくする術中蛍光診断法も取り入れた。こうした術中モニタリングの相次ぐ導入で、治療成績も向上。「神経膠腫の場合、現在の三年後生存率は66%。術中モニタリングの手術例がもっと増えれば生存率はさらに上がる」と倉津院長。熊本大のニューロナビ治療は今年四月、国の高度先進医療に認定されている。年間の手術数は約六十件に上り、全国トップクラス。

 後遺症も少なく

 脳腫瘍が言語や運動機能などを司る脳組織の近くにある場合、正常な脳組織を傷付けずに取り除くことも重要になる。

 同病院では、手術中に患者の全身麻酔を一時的に覚ましてから腫瘍を切除する「覚せい下開頭手術」を実施している。患者に意識があるため、言葉に障害が出ないかを確認しながら進めることができる。

 ただ、神経膠芽腫など腫瘍を完全に取り除くことができないケースは少なくない。その場合は放射線治療や抗がん剤を組み合わせて治療することになる。外科だけでなく、放射線科医などと連携した医療体制が、さらに求められている。(梅野智博)

 ●脳腫瘍(しゅよう) 頭がい骨の内部に発生する腫瘍の総称。神経膠腫(こうしゅ)と呼ばれる悪性腫瘍と、髄膜腫などの良性腫瘍、肺がんなどが転移してできる転移性脳腫瘍の3種類に大別される。頭痛、けいれん、聴力低下、無月経など多様な症状がある。

  (熊本日日新聞2007年5月12日付朝刊)
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