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認知症 手術で回復も 水頭症原因 歩行障害、度忘れ…
手術で良くなる認知症がある。頭の中に髄液が過剰にたまる水頭症が原因になっている場合だ。根治が難しいアルツハイマー病などと混同されて治療が遅れるケースもある。検査は日帰りでもできる。体への負担が少ない手術法の普及も進んでいる。
特発性正常圧水頭症患者の手を引き、歩行障害の様子を診察する村上雅二医師=熊本市の熊本託麻台病院
熊本市内で農業を営む60代の男性Aさんは、2、3年前から足がよろけて、しっかりと歩けなくなった。度忘れが多くなり、仕事への意欲も低下。自宅でテレビを見ながらボーっと過ごすことが増えたという。今年8月に熊本託麻台病院(同市尾ノ上)で検査を受けて、水頭症によって脳が圧迫され、認知症や歩行障害が起きていると分かった。
高齢者の水頭症はこれまで、脳出血や脳挫傷など脳組織が傷つけられる病気の後遺症と考えられていた。
しかし、「脳出血などの病歴がなくても水頭症になる人が少なくないことが、最近になって分かってきた。それらの水頭症は原因不明なので、特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼ばれている」と同病院の村上雅二脳神経外科部長。
村上部長によると、iNPHは3つの重要症状がある。小刻みにしか歩けない歩行障害、度忘れや意欲低下などの認知症状、そして尿失禁だ。
iNPHは脳細胞の変性や死滅によって起こるアルツハイマー病やパーキンソン病、老人性認知症などと症状が酷似しており混同しやすい。認知症患者160万人のうち5%近くがiNPHと見られている。
「iNPHは注目されて間もない病気なので、熟知していない医師もいる。パーキンソン病などとみなされ、適切な治療を受けていない患者も少なくない」と日本特発性正常圧水頭症研究会。同会は2004年に診療ガイドラインを発表し、診断や治療の標準化を進めている。
国内のiNPH手術は、頭と腹部を直径5ミリほどの管でつなぎ、過剰にたまった髄液を流し出す「脳室―腹腔(ふくくう)シャント」が一般的だ。しかし、「頭の骨に直径2センチの穴を開ける必要がある。また水量調節バルブを皮膚の下に埋め込むので、皮膚のふくらみを気にする女性もいる」と村上部長。
同病院は、背骨と腹部をつなぐ「腰椎(ようつい)―腹腔シャント」手術を薦めている。髄液は脳と背骨の中を循環しているので、髄液を流し出す効果は同じという。
いずれの手術も1時間ほど。全身麻酔で実施する。リハビリなどのため術後は3週間ほどの入院が必要だ。
ただ、手術しても十分な効果が出ない患者もいる。同研究会の資料によると、手術で歩行障害が改善したのは八割ほど、認知症状の場合は6割にとどまる。水頭症以外の認知症と合併しているケースも少なくない。
Aさんは「腰椎―腹腔シャント」手術を受け、数日後には一人で歩けるようになった。「昔と全然変わらない。これで農作業もできます」と元気に話した。(梅野智博)
(熊本日日新聞2006年11月15日付朝刊)
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