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若年・軽度の人が集う認知症デイサービス
 認知症(痴呆症)の受け入れ施設が増える中、若年性や軽度の人のニーズに合った支援を提供する新たなデイサービスが注目されている。既存のデイサービスは高齢者や重度の人の利用が多く、若年性や軽度の人は行きづらかったり、満足できなかったりするためだ。滋賀県守山市の「もの忘れカフェ」と福岡市の「天神オアシスクラブ」を訪ねた。(田川里美)

 活動は利用者主体で

 「イモ作りなんかしたっけ?」「ノートに書いてあるやろ」「ほんまや。なら作ったんやろなあ」

その日の活動内容をノートに書き写す利用者。「早くボケを治すため」と熱心だ=滋賀県守山市の藤本クリニックデイサービスセンター
 JR守山駅横のビルにある「もの忘れカフェ」で、7人の利用者が話し合っていた。この日のプログラムは、春に植えたサツマイモの収穫までを伝える新聞づくり。朝一番に利用者たちで決めたプログラムだ。

 全員が認知症。炎天下の水やりも、掘ったイモをふかして食べたことも、覚えていない。毎日の活動を記したノートを頼りに記憶をたどる。「今日は何するんだっけ?」。今やっていることも、すぐに忘れる。「新聞づくりやろ」。仲間同士だから明るく言い合える。

 「カフェ」は昨年10月、同じビル内で心療内科などを開く藤本クリニックが、3つ目の認知症デイサービスとしてオープンさせた。対象を若年者や軽度の人に限定。「高齢者や重度の人とはペースが違う。我慢させていたことに気付いたんです」とデイサービスセンター長の奥村典子さん(40)。

 50代の若年者や軽度の高齢者15人が登録。介護保険サービスの対象だが、その中身は従来のデイサービスと異なる。午前9時半から午後4時まで何をして過ごすかはその日の利用者全員で決める。料理や買い物、創作活動などさまざまで、旅行に出かけることもある。職員はサポート役に徹し、利用者主体で進める。

「もの忘れカフェ」では利用者一人一人がその日の活動や感想をノートに書き込む。覚えていなくても「書いてあるからやったんやろな」=滋賀県守山市
 「カフェ」が目指すのは「お茶を飲みながら、もの忘れを普通に話せる場」。全員がもの忘れを自覚し、認知症の告知を受けている人もいる。共通する思いは「早くボケを治して元通りになりたい」。その訓練も兼ねて、その日の活動や感想を1人ずつノートに書き込む。ノートが記憶の代わりになり、継続的な活動にも取り組める。

 「既存のデイサービスでも個別支援ができていれば、その人に合った支援は可能」と奥村さん。「ただ実際は、年齢や程度が違うとなじめないことが多い。その結果、家に閉じこもり、症状が進むこともある。初期の段階から仲間たちとコミュニケーションをとり社会参加できる場が、進行を遅らす意味でも必要です」と話す。

 帰る時間が近づき、ようやく新聞の名前が決まった。「いもづる新聞」。連なるイモを自分たちと重ねた。「いい名前やなあ」。そう言いながら全員がノートに書き込んだ。奥村さんは「多分、記憶には残りませんが、充実した時間を過ごすことは利用者を生き生きとさせる。意味のあることなんです」と話す。

 陶芸、エアロビクス…まるで教室のよう

 繁華街のオフィスビル内にある「天神オアシスクラブ」。福岡県宮田町の有吉病院が運営する。軽度の認知症がある50代から90代までの83人が登録。「もの忘れはあるが、体は元気でプライドもある。従来のデイサービスでは満足できないんです」と施設長の中島七海さん(55)。

軽度や若年の認知症の人が通うデイサービス「天神オアシスクラブ」。カルチャースクールのような雰囲気だ=福岡市中央区天神

 提供するのは芸術レクリエーション。専門家を講師に招き、陶芸や書道、はがき絵、造形教室、音楽療法、エアロビクスを高齢者向けに改良した「ケアビクス」などを曜日ごとに実施。月に1度はハワイアンダンスや化粧療法などもある。入浴サービスも送迎車もない。介護保険サービスの対象だが、まるでカルチャーセンターだ。

 職員は利用者を「会員」と呼ぶ。会員から「全員の作品を張るのは幼稚だ」というクレームを受けてからは、室内には会員の目にかなう作品だけを張っている。「軽度の場合、本人も家族も認知症を認めたくない気持ちがある。尊厳を守り、いかにデイサービスに来ている感覚をなくすかが大事です」と中島さん。

 ここに通う越智俊二さん(58)は47歳のときに発症した。営業職だったが、認知症が原因で取引先とトラブルになり、52歳で退職。医師の診断を受けたのはそれから2年後だった。

 中島さんは「早期に認知症と分かっていれば、会社も対応できたかもしれない。確実に症状があっても、若いうちは恥ずかしさから受診が遅れてしまう。根強い偏見があるんです」と指摘する。

 さらに、認知症の診断を受けても、越智さんら若年者の受け皿は少ない。中島さんは「オアシスクラブでも十分とは言えない。若年者は少しの援助があれば十分仕事ができる。生産人口になれるんです。作業所のような場があれば若年の人ももっと生きがいを持てるのではないか」と話す。

  (熊本日日新聞2005年9月18日付朝刊「サンデー特報」)

 
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