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脳腫瘍に新型サイバーナイフ 高精度で患者の負担軽減
 脳の奥にできた腫瘍(しゅよう)を狙い撃つ脳定位放射線治療。その一つ、サイバーナイフによる治療は、薬事法違反で中断されていたが、改良された新型のサイバーナイフUが昨年末、厚労省の認可を得て、医療現場で復活している。

 病巣に集中

 定位放射線治療は、低線量の放射線をあらゆる方向から照射して病巣に集中させる一方、周辺の正常細胞の被ばくは抑える。サイバーナイフ以外に、加速した電子ビームを発射する放射線装置(リニアック)を患者の周囲に回転させる「エックスナイフ」や、多数のガンマ線ビームを一カ所に集中させる「ガンマナイフ」がある。CTなどの画像診断で、病巣の位置を特定する能力が上がって開発された。

 サイバーナイフは、自動車工場の溶接部門で使われている産業ロボットにリニアックを取り付けた。四方八方から一ミリ以下の精度でエックス線を照射する。巡航ミサイルの航法技術を応用した位置認識システムも備え、治療中に患者が動いても十ミリ程度なら自動修正、それ以上なら中断する。

 二〇〇三年三月、当時の販売会社が手続きミスで薬事法違反に問われ、厚労省が回収命令を出し、事実上、使えなくなった。しかしサイバーナイフ2の認可後、〇四年一月に販売会社が交代。今年八月末現在、大阪大付属病院や九州大付属病院など全国十五病院が導入している。

 治療は1時間

 大阪大付属病院(大阪府吹田市)は昨年末、治療を再開した。まず患者の精密なCT画像を撮影。治療の際は、天井二カ所に備えたエックス線撮影装置による画像と事前のCT画像を比較して位置を決め、照準を合わせる。

 患者には、メッシュ状のプラスチックで作ったマスクをかぶせて頭部を固定する。金属製のフレームを頭にピンで固定するガンマナイフと違い痛みはない。

 エックス線は、百カ所の地点からそれぞれ十二方向、最大千二百本のビームを照射できる。リニアック先端のキャップ状の器具を変えると、五ミリ〜六十ミリの間でビーム幅を十二種類選択できる。

 病状に合わせてこれらを組み合わせ、コンピューター制御で病巣にピンポイントで照射する。阪大病院の塩見浩也医師によると、実際の治療で使うビームは百本から二百本くらい、治療時間は一時間程度という。この間、患者はじっと寝ているだけだ。

 体に優しい

 サイバーナイフUによる治療は、従来の全脳照射では二〜四週間かかっていた治療が一日で終わる。分割照射でも一週間程度。分割照射は一回の線量が少なく、照射と照射の間に、被ばくした正常細胞が回復するため、さらに体に優しい。

 「サイバーナイフは分割照射でも精度が落ちない。それが大きな利点」と塩見医師。阪大病院は大きさは三センチ程度まで、数は三つまでの腫瘍を対象にしているが、さらに大きくても分割照射で対応できる。形が複雑な腫瘍や視神経など重要な神経に近い病巣の治療も得意とされる。

 また、頭部のみを対象にするガンマナイフに対し、サイバーナイフは首まで治療が認められている。能力的にはエックスナイフと同様、肺や肝臓などの体幹部も治療できる。阪大付属病院の井上武宏・脳神経外科教授は「体幹部の治療まで認められて、初めてその実力を発揮できる」と適応拡大を心待ちする。

 エックスナイフで治療する癌研有明病院(東京都江東区)の山下孝・放射線治療科部長は「定位放射線治療は、がん治療の地平を広げる。ただ実力を出させるには医学物理士制度など、医療制度の拡充が必要」と指摘している。

  (熊本日日新聞2005年9月14日夕刊掲載)
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