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タウタンパク質検査 アルツハイマーの発病を診断
 物忘れが多くなったことに気付き、アルツハイマー病のぼけを疑って病院を受診する中高年が少なくないという。アルツハイマー病の治療薬が開発されたことが大きく、東北大付属病院老年・呼吸器内科の荒井啓行助教授は「早期であるほど治療薬の効果があるわけで、もし病気が始まっていたら『早く薬をのみたい』という人が多い」と話す。

 バイオマーカー

 アルツハイマー病は初期段階では的確な診断がなかなか難しい。東北大病院では、確実に診断できる方法として、脳脊髄(せきずい)液中の「タウ」と呼ばれるタンパク質の測定を続けてきた。

 荒井助教授によると、アルツハイマー病の診断のためにいろんな試みがされてきたが、残ったのはタウだけ。世界でただ一つ認められたバイオマーカー(生体指標)という。

 アルツハイマー病患者の脳では、まず毒性を持つ「ベータアミロイド」というタンパク質が細胞外に沈着し始める。この蓄積が十〜二十年続くと、神経細胞内にある微小管と呼ばれる構造が変化して神経細胞が死ぬ。その結果、ぼけが始まる。

 この時、微小管を構成するタウも変化し、細胞死が起こるとともに細胞の外に漏れる。

 脳脊髄液中のタウの量が増えてくれば、アルツハイマー病を発病していることが分かる。検査時間は十五分ぐらいだ。

 見極め可能

 脳脊髄液中のタウの量を測ると、正常な人は一ミリリットル中三二〇〜三三〇ピコグラム(ピコは一兆分の一)だが、アルツハイマー病の初期では四〇〇〜五〇〇ピコグラム。中期以降は六〇〇ピコグラム以上になる。

 四十七歳で受診した男性の場合、父親や祖母などが痴ほうで亡くなっており、四十四歳ごろから物忘れが始まったという。

 記憶力などの認知機能を調べるテストでは正常範囲と判定された。MRI(磁気共鳴画像装置)でも脳に委縮などはなかった。ところが、PET(陽電子放射断層撮影)で脳の活動状態を調べたら、脳の中央に近い部分の機能が落ちていることが分かった。

 脳脊髄液中のタウを採取すると六三二ピコグラム。脳の神経細胞死がかなり進んでいると推定された。

 症状はその後徐々に進行。三年半後の今年になると、日時の感覚や自分の年齢も怪しくなってきた。MRIでも委縮が分かるようになった。

 荒井助教授は「物忘れは、人によって進行せずに止まることもあれば、そのまま落ち続ける人もいるので、見極めないといけない。進行するかどうか、タウで90%は見極めが可能だ。危なければ、その段階で治療を始める」

 漢方薬を併用

 アルツハイマー病の治療薬「塩酸ドネペジル」(商品名アリセプト)は、一年間ぐらいは効果があり、認知機能を低下させない。荒井助教授によると、重症化していても、ある程度は効くという。

 東北大病院老年科は、アリセプトと「加味温胆湯」などの漢方薬を併用して治療している。アリセプトと漢方薬は、認知機能を維持する上で相乗効果をもたらすとみられる。「度忘れなど、ほとんどの物忘れは怖くない。アルツハイマー病は数時間から数日前の記憶がすっぽり抜け落ちてしまうのが特徴だ。今日の午前中に何をしたか覚えていないとか、昨日の夕食が何だったか覚えていないとか、自分の生活の記憶が失われるケースが怖い」。荒井助教授は、そう指摘している。

  (熊本日日新聞2003年6月25日夕刊掲載)
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