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脳に“ペースメーカー” 電気刺激で震えの治療
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自分の意思に反して手足や顔などが震える「振戦(しんせん)」の不快な症状を、脳に小さな電極を入れて抑える「脳深部刺激療法(DBS)」が効果を上げている。神経の伝達回路を電気刺激で調整する、いわば“脳のペースメーカー”だ。根治療法ではないが、薬の投与量や副作用を軽減できることも手伝い、二〇〇〇年に医療保険の適用となった。
■生活の質が低下
振戦は、パーキンソン病の症状や脳卒中の後遺症として現れる以外に、原因の病気がない「本態性振戦」がある。震えは、安静時や動作の際に出ることもある。食事や文字を書くときに不自由したり、しゃべる際に声が震えて生活の質を低下させる。
パーキンソン病には、減少した脳内の神経伝達物質ドーパミンを補う「Lドーパ」という有効な薬があるが、長期間使うと効きにくくなりやすい。本態性振戦もベータ遮断薬という薬があるが、重症者には限界がある。
日本や欧州の一部では、大脳の底部にある視床核を焼く「凝固術」が盛んだった。ところが、日本大医学部の片山容一・脳神経外科教授によると、脳の一部を新たに破壊するため、効果が確実な場合以外は踏み切れないことが多かったという。こんな背景から、脳組織を破壊せずに済み、効果によっては中止することも可能な治療法として研究が進んだのがDBSだ。
■効果確認しながら
DBSの装置は、先端に四つの電極が付いた刺激用の細いリードと、電極に信号を送るパルス発生器、それらをつなぐケーブルで構成される。リードは、頭がい骨に直径一センチほどの穴を開け、CTやMRIであらかじめ計測した視床の目標に挿入していく。
日本大は振戦で約百例、他の病気を含めると既に約四百例を手掛けており、原則、局所麻酔で手術する。米国では全身麻酔が主流だが、片山教授は「(局所麻酔の方が)患者に実際に刺激を与えて効果を確認しながら、最も適した部位に挿入することができる。痛みなどもない」と、正確な手術ができる長所を挙げる。
一方、パルス発生器はあらためて手術をして胸の部分に埋め込む。患者は震えが起こった際、携帯スイッチを使い、自分で装置の作動や刺激の強弱を操作できる。
■薬の副作用抑制
米国の臨床試験では、DBSはパーキンソン病の振戦を87%、本態性振戦を82%、抑制するとの結果が出ている。日本大でも震えが完全に止まった患者は80%を超え、「満足できる程度に軽減」を含めると90%以上に効果があった。
「DBSによってLドーパなど治療薬の投与量を減らしたり、使わなくてもいいようになるため、副作用も抑えられる。一日のうちで症状の出方に差があるような人にも向いている」と片山教授。ただ病気が進行してLドーパが効きにくくなった人にはDBSもあまり効果がない。挿入手術が脳出血を誘発する恐れもわずかだがある。
保険適用以降、国内で実施されたDBSは約六百例。このうち10%の六十例は熊本大病院(熊本市)が占め、九州ではトップクラスの実績だ。片山教授は「パーキンソン病など、進行性の病気に長期的な効果があるかどうかは、まだ分からない点もある。脳神経外科と神経内科が連携して患者を管理しながら評価していきたい」と言っている。
(熊本日日新聞2003年3月4日夕刊掲載)
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