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広がる「もの忘れ外来」 薬や美術療法で進行抑制
 痴ほうを早期発見し、進行を抑えようとする「もの忘れ外来」が全国に広がっている。介護保険が導入され、抗アルツハイマー型痴ほう薬が使えるようになったのが大きい。筑波大付属病院の朝田隆教授らは、治験(臨床試験)中の薬も積極的に投与する一方、造形美術療法(アートセラピー)による脳のリハビリを取り入れ、新しい「もの忘れ外来」を試みている。

 ■治験薬を1年提供

 同病院のもの忘れ外来では、アルツハイマー型痴ほう症を早く見つけるため、脳の画像診断や血流測定、神経心理検査をする。一九九四(平成六)年に国立精神・神経センター武蔵病院(東京都小平市)が初めて導入した方式だ。

 難点は、一人の診断時間に一時間割くため、多くの患者に対応できないこと。受診者は年平均約三百人、年齢層は三十代〜九十代と幅広い。年齢とともに進む記憶力の低下とは区別して、初期のアルツハイマー型痴ほう症と診断できたら、進行を抑制する薬を処方する。治験の最終段階に入っている三種類の薬も積極的に使う。

 治験で使うのは薬か偽薬(プラセボ)か、医師も患者も分からない。偽薬を服用する可能性もあり、半年間の治験が終わり、患者が希望すれば薬を一年間、無料で提供する。この三種類の薬のうち「ガランタミン」(商品名レミニール)は既に海外三十カ国で発売され、九州でも九州大付属病院、福岡大病院、国立療養所菊池病院、鹿児島大付属病院など十二施設が治験に参加している。

 ■右脳の活性化

 浅田教授らは筑波大付属病院から車で五分ほど走った筑波記念病院で、芸術造形研究所(東京都千代田区)の協力を得て、アートセラピーによる脳のリハビリ、認知機能の維持・回復にも取り組んでいる。初期のアルツハイマー型痴ほう症の患者十人と家族十人の計二十人が一クラス。二クラスあり、月三回開く。一回につき二時間、絵画や彫刻、工芸といった美術活動をする。毎回テーマを決める。具象表現もあれば、抽象表現もある。右脳を活性化させ、生きる意欲を創出するのが狙いだ。講師の木村聡美さんによると、クラスの大半は、大人になってからの美術経験はないが、会話や笑いに包まれ、独創的な作品が出来上がるという。

 ■家族への支援

 この療法は毎週一回ずっと継続する。月一回は、朝田教授らが、患者と一緒に参加したパートナー十人と困りごとなどを話し合い、集団カウンセリングをする。家族の心が安定すれば、患者の症状も和らぐというわけだ。

 もの忘れ外来は、痴ほう症治療への抵抗感を弱めた。全国の大学病院の三分の二が既に開設し、熊本大付属病院も二〇〇〇年十二月に開いた。

 しかし、早期治療できる状況にはなっていない。「過度に期待されても困るが、放置せずに薬とアートセラピーなどのリハビリ、家族への支援を組み合わせて初期症状の進行を抑えたい」。朝田教授はそう話す。

 (熊本日日新聞2002年9月10日夕刊掲載)
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