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スズメバチ被害 自己注射で応急手当て

 秋になるとスズメバチなど大型のハチの活動が活発化。農林業者やハイキングに出掛けた人が被害に遭うケースが後を絶たない。万が一、ハチに刺されて強いショック状態に陥った時、自己注射による応急手当てができるようになった。

アナフィラキシーショックを緩和するエピネフリン注射液。自分で太ももに注射できる=写真提供・メルク(株)
子供用(右)と大人用の自己注射薬
 ハチに刺されて意識を失うような強いアレルギー反応は「アナフィラキシーショック」と呼ばれる。急激な呼吸困難や血圧低下、吐き気などの症状があり、重い場合は死亡することもある。

 九州の国有林を管理、保全する林野庁九州森林管理局(熊本市)では、二〇〇五年度に職員延べ百十人がハチに刺され、そのうち五人は病院で治療を受けた。今年も八月までに八十三人が刺されている。同管理局で職員厚生を担当する出口健二監査官は「スズメバチの攻撃性が高まる秋になると被害が増える。これからが最も危険なシーズンに入る」と警戒する。

 全国的には職員の死亡例もある。一九八六年に一人、翌年は三人、九四年にも一人が死亡する公務災害が起きている。

 刺されてもハチ毒そのものでは死亡しない。国立病院機構熊本医療センター救命救急部長の高橋毅医師は「ハチ毒には組織を溶かす分解酵素が含まれている。刺されると腫れて痛いが、数日すると治る。重症になることはない。ただ、過去に刺された経験がある人は、アレルギーを警戒する必要がある」と話す。

 最初に刺された時、体内に抗体と呼ばれるタンパク質ができる。二回目以降は、この抗体が過剰反応(アレルギー反応)し、「人によっては全身性の激しいショック症状になる」(高橋医師)。

 こんな時、一時的に症状を緩和して、病院に行くまでの時間を稼いでくれるのが自己注射用「エピネフリン注射液」(商品名エピペン)だ。林野庁職員の強い要望を受けて、〇三年から輸入が認められるようになった。

 注射針が内蔵された注射器に、アレルギー反応を抑える薬液(アドレナリン)が入っている。サイズは大きめのフェルトペンほど。安全キャップを外して、太ももの前外側に強く押しつけると、ばねの力で一定量の薬液が筋肉内に注射される。

 同管理局では、森林で働く職員を中心に約六百五十人が自己注射薬を携帯している。昨年は二人が実際に使用した。ともに症状は軽く、まもなく公務に復帰した。「病院まで一時間ほど掛かる現場も多い。今は安心して作業できるようになった」と出口監査官。

 この自己注射薬は、〇五年三月から食品アレルギーにも使用が認められるようになった。「子どものアレルギーに悩む保護者には朗報だろう」と高橋医師。

 しかし、同薬を処方してもらうには事前の検査のほか、登録医の指導や訓練を受けることが義務付けられている。使用法を誤ると脳出血、肺水腫など重い副作用があるからだ。米国では死亡例もある。また、注射針が付いているので、管理も徹底しなければならない。高橋医師は「血管障害の人が間違って打つと危ない。使用ルールは厳格に守ってほしい」と話している。(梅野智博)

  (熊本日日新聞2006年9月20日付朝刊)
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