「シラス学」 横山勝三著

 鹿児島には藩政時代、「山坂達者の教育」というのがあった。シラス台地の上に通じる急な坂道を、青少年の心身の鍛錬に生かした教育。シラスが暮らしに密着したことを物語るエピソードだ。

 シラスは火山周辺に分布する”白い砂”をいうが、最近では入戸(いと)火砕流のたい積物を指す。二万五千年前、鹿児島湾北部の姶良カルデラを作った大噴火だ。最大百五十メートルの厚さで分布し、人吉盆地にもある。

 急坂はもちろん、サツマイモやダイズ、ナタネの独特の畑作、五十メートル以上もある深い井戸…。そこには”シラス文化”というべき、独特の暮らしが営まれてきた。

 著者は熊本大教授で専攻は地理学。鹿児島県吹上町出身で、シラスに取り組んで四十年。集大成ともいうべき本書には、シラスのいろはから最先端の研究まで盛り込まれ、地元ならずとも興味深く読むことができる。(古今書院・四五〇〇円)
熊本日日新聞2003年11月1日朝刊