熊本豪雨で被災の「釜田醸造所」が復活の一滴 人吉市のしょうゆ業者 「長いようで、あっという間」 

熊本日日新聞 2024年4月9日 18:11
搾り出された生しょうゆを見つめる釜田顕さん=9日、人吉市
搾り出された生しょうゆを見つめる釜田顕さん=9日、人吉市

 2020年の熊本豪雨で浸水した人吉市鍛冶屋町の「釜田醸造所」は9日、被災後に初めて仕込んだ「もろみ」から、生しょうゆを搾った。滴のこぼれ落ちる様子を見守った3代目社長の釜田顕さん(56)は「ここまで長いようで、あっという間だった。この滴の音は、とても感慨深い」としみじみ語った。

 午前8時、従業員2人がこうじや大豆、酵母などを混ぜたしょうゆの元となる「もろみ」を、布製の袋に流し込み、「舟[ふね]」と呼ばれる容器に積み重ねると、重みでしょうゆが袋から染み出した。30分後、舟に付いた蛇口から、生しょうゆが流れ出ると豊かな香りが広がった。

搾り出されたばかりの生しょうゆ。右の浅い器だと鮮やかさが際だつ=9日、人吉市
搾り出されたばかりの生しょうゆ。右の浅い器だと鮮やかさが際だつ=9日、人吉市

 豪雨で工場は床上1メートル以上浸水。「もろみ」を発酵させる全6タンクに泥水が流入し、生産できなくなった。この3年半は、福岡の業界団体から仕入れた「もろみ」を使っていた。

 一方、釜田醸造所の味を特徴付けていた酵母は、泥水の浸入を受けながらも、タンクの底に無事残っていた。そのため、熊本県産業技術センターの支援を得て酵母を抽出。昨年3月の仕込みで酵母の培養液を投入し、創業時から続く味を復活させた。

 今後、不純物の除去や加熱処理をして、しょうゆが完成する。県内外の300人以上によるクラウドファンディング参加者への返礼や直売などを、4月末の大型連休前までに始める予定。釜田さんは「たくさんの支援をいただいた。これからも愛される店でありたい」と話した。(金村貫太)

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本豪雨