どんなに高い山に登っても月や星に手は届かず、どれほど遠くにあるのかよく分かりません。そもそも、地球が丸いことを知ってはいても、ふだんの生活の中で気付く機会はありませんね。天体の大きさや、天体同士の距離について、鹿児島大学の半田利弘教授に教えてもらいました。(鹿本成人)
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ふだんの生活では地面は平らだと感じますが、海の近くの高い山に登ると、地球が丸いことが分かります。例えば標高1000メートルの山の上からは、約120キロ先に水平線が見えます。この時、両目で見える範囲(左右約120度)で水平線が2度ほど曲がっているように見えます。この曲がった水平線が、丸い地球の一部です。地球の直径は約1万3000キロあります。
では、地球を含む太陽系の大きさはどれほどでしょうか? そのままでは大きすぎるので、全体を200億分の1に縮めて考えます。すると地球は小さなビーズほどの大きさになります。太陽はテニスや野球のボールくらい。太陽と地球の距離は7・5メートルになります。つまり、太陽と地球の大きさと距離は、学校の教室のはじに置いたテニスボールと、反対側のはじに置いたビーズ玉に例えることができます。
ほかの惑星も考えてみましょう。熊本市中央区の上通アーケードの南側入り口に、テニスボール大の太陽を置くことにします。すると太陽系で最も大きな惑星、木星までの距離は39メートル。文具店「甲玉堂」のあたりです。200億分の1に縮めた木星は直径7ミリしかありませんから、太陽から見て木星は「点」にしか見えません。
太陽系で最も外側にある惑星、海王星までの距離は225メートル。長崎書店を通り過ぎたカレー専門店「CoCo壱番屋」あたりです。海王星より外側にある準惑星、冥王星は約300メートル。これより遠くにも、準惑星やすい星などがあります。
さて、太陽と同じように輝く「恒星」までの距離はどうでしょう? 太陽に最も近い恒星「リゲル・ケンタウルス」まで約2000キロ。熊本県を中心に考えると、日本を飛び出して香港あたりになります。
このように宇宙は意外に“スカスカ”で、隣の天体までの距離はとても遠いのです。それでも天文学者は地上の大きな望遠鏡ではるかかなたの天体を観測したり、惑星探査機を飛ばして着陸させたりしています。遠い宇宙を調べようとする人間の好奇心は、とても強いのですね。